全国のR不動産
面白くローカルに住むためのガイド



東京R不動産から全国のR不動産へ
馬場正尊 (東京R不動産/Open A 代表)


2003年、東京R不動産は始まった。東京都心の、ちょっとクセがあるけれど、ある人にとってはたまらなく魅力的かもしれない物件を集めた不動産サイト。
今までは駅からの距離や広さ、設備や築年数などの性能情報で評価されていた物件を、R不動産では「改装OK」「レトロな味わい」「天井が高い」など感性のアイコンと、率直な文章と写真で表現した。それはおそらく都心居住や、中古物件の味わい方、リノベーションの普及に一役買ったはずだ。

東京R不動産が始まって3年が経った頃、「金沢でR不動産をやってみたい」と、サッカー仲間の小津さんから切り出された。本職は建築家、でも金沢で飲食店を経営したりとやんちゃな先輩だ。それが全国へ展開するきっかけになった。
その後、福岡からは20代の若者が突然やってきて、「オレに福岡R不動産、やらせてください!」と、ほとんどこちらに選択肢を与えない勢いで話を進めた。その本田さんは独立したばかりで、新しい人生をこれにかけていた。
稲村ヶ崎では、これまでの人生で15の会社をつくり、そのうちの二つを上場させ、28回の引っ越しを重ねた経験
豊かな藤井さんが、なぜか「次は、R不動産をやる」と言いだした。
神戸では、森ビルでの勤務や、ホテル会社の社長という、およそR不動産の世界とは似つかわしくない経歴を持つ小泉さんが、究極の住み処を求めてたどりついた街で、その価値観を表現すべく神戸R不動産を始めた。
この動きは山形、房総、大阪、鹿児島へとつながっていく。

R不動産という名前は共有しながら、誰ひとりとして似たようなキャラクターはいないし、始めた動機も、ベースとなる職業も、そして都市の規模も課題もさまざまだ。共通しているのは、自分たちの街を圧倒的に愛していることと、その街での生活をもっと楽しく変えていきたいと思っていることだ。
この本はその想いの集積によってできあがった。

R不動産は、こうして少しずつ全国に広がり、現在9都市で活動をしている。拡大は目的ではないけれど、共感してくれる仲間が増えていくのは嬉しい。住むことに対する新しい価値観を一緒につくっていきたいと思っている。この本が、R不動産という媒体を通し、日本をいかに面白く過ごすか、そのヒントになってくれればいいと思う。