建築デザイン発想法
21のアイデアツール

おわりに ──本製作を振り返って

平尾 本の製作に携わってどうやった?
山本 編集者とのやりとりが意外に難しかったです。執筆者と編集者という関係がクライアントと設計者との関係と同じなので、この作業はいい経験になりました。
北野 こつこつ作ってきた文章や図版が実際手に取れる形に出来上がるのは、感慨深いものがありますね。ものづくりをする様々な人にこの本を手に取ってもらいたいです。
余田 改めて、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の重要性を学びましたね。チームで物事を進める時はホウレンソウを意識することで仕事がスムーズに動くことを学びました。
山本 就活中に、作業が少しあったのは、さすがにやばかったね。
余田 そうですね。就活と平行してやるのは大変でしたね。何回も学校に泊まりましたし。
北野 私は計画性が身についていなくて怒られることが多かったですねぇ。
余田 でも、がんばったのは僕らだけではないですよね。
北野 実験に協力してくれた後輩の菊池君、島一生君、長柄君、高橋君、小原君、ウフィちゃん、友廣君、島敦君、石橋君、川崎君、本当にありがとうございます。
 
   ***
 
「発想法なんて、広告屋さんの専売特許」、著者自身のそうしたイメージを大きく変えることになったのは、実は10年ほど前のことです。知人のお手伝いで参加した日本デザイン学会の、「創造的デザイン手法」なにがしと銘打たれたシンポジウムへの参加がきっかけでした。当時の会場には、著名な電器メーカー、自動車メーカー所属のデザイナーや芸大系の研究者が集まり、「自分たちはクリエイティビティーを向上させるために○○の取り組みをしている」「デザイン思考を△△モデルと仮定すると、◇◇な技法が有効じゃないか?」といった活発な討議を展開されていました。家電や輸送機器のデザイナー達が、かくもたくさん、何らかの技法に注目し、思考技術的観点からデザイン向上を目指しているのか!と驚くと同時に、同じ人間環境に関わる建築ではこうした議論がなぜ少ないのだろう?と不思議に思ったことを覚えています。
 
もともと「設計プロセス」を研究テーマにしていたこともあり、著者自身には「デザイン思考」を研究することに違和感はありませんでした。「プロダクトで出来るなら……発想法を建築に応用したらどうなるだろう?」。本書の出発点は、そうした瞬間の思いつきにあります。
 
かくして立命館大学の研究室では、建築や家具などのデザイン・プロセスに、発想法を援用する実験が始められました。大学院生が中心となって行うアイデア・コンペやプロジェクト初期段階における、日々のデザイン作業の発想プロセスに諸技法が取り入れられ、スケッチやキーワード、会話データなどが分析にかけられる作業は、今でも続けられています。
 
本書は約7年間のこうした研究室活動の成果です。決して著者一人の活動ではなく、研究室メンバーであった下記の諸氏とのダイアローグと協働によって生み出されたものであることをここに明記したいと思います。
 
 立命館大学 理工学部 建築都市デザイン学科 平尾研究室
  山本伊織
  余田尚紀
  北野奈緒美
    *
  今井慎二
  水谷好美
  加藤直史
  廣瀬 悠
  勝田規央
  小山雅由
  小松隼人
  加藤光彦
  滝川 淳
    *
  山本直彦(旧講師、現・奈良女子大学)
 
 また、デザイン実験に参加頂いた方々、提案書の評価にご協力頂いた関係各位、編集とアドバイスにご尽力頂いた学芸出版社・知念靖広氏に御礼を申し上げます。