成熟のための都市再生


書 評
『サライ』2006.11.10
 正倉院の校倉建築や法隆寺金堂など古代の木造建築を見ていくと、「10m」というキーワードが発見できるという。使える木材の長さの限界が10mで、当時は材料の制約がそのまま構造に反映していたからだ。ただし、本書は、表面的な建築様式を追うものではない。技術的・財政的な背景も掘り起こしながら、伝統木造建築の歴史や特徴に新たな視点を当てていく。
 また、部材のひとつひとつを解剖し、その働きや仕組みについて豊富な図版を駆使してわかりやすく解説。建物の重量を支え、地震や台風にも耐える木造建築を作り出した先人の工夫に目を開かされるに違いない。文化財建造物の保存に長く携わる著者ならではの、保存・修理の事例も興味深い。
(住)