住宅地のたたずまいはその国の政策や住民の民意をあらわします。今の日本の住宅地は、国や住民が本当に望むたたずまいといえるでしょうか。どこかに誤解やミスマッチがあるように思えてなりません。
今のままの都市計画や不動産の法・制度で今のままのスタイルで住宅地をつくり続けると、日本はまちがいなくだめになります。なりつつあります。私はこうした危機感をもちながらも、絶望的で、悲壮な気分に皆さんをするのではなく、あかるく前向きに、この問題を考え、進むべき方向をきちんと示そうと、本書を執筆しました。
本書で述べたいことは、二つあります。
第一に、「住宅地、住宅はこうあるべきだ」と、多くの人が思い込んでいる概念が、実は日本全体を苦しめています。だめにしているのです。
たとえば、住宅地・住宅について、こんなことを思っていませんか?
@道は幅広く直線がよい。
A庭は広い方がよい。
B頑丈な高い塀をもつ家が、立派な家である。
C私道に接している家は、不動産の評価が低い。
D借地で住んでいると、不安である。
E法律で決まっているよりも、もっと厳しいルールがあるところは、住みにくいし、住宅を売りにくい。
Fマンションのような、管理組合とはわずらわしいものである。
G古い住宅には魅力がない。価値もない。
これらをみて、ほとんどの人は、「そうだよな」「まあ、そうだな」と思われるでしょう。本書では、今までの常識と思われていたこの八つのことを再考し、覆します。そんなことがあるはずがないと言う、少し疑い深い人のために、私が一〇年間かけて全国で行ってきた調査結果で証明することにします。
日本をよくしていく住宅地、私たちを豊かにしてくれる住宅地を紹介します。それは、どんどん価値が上がる住宅地でもあります。
第二に、本書に示す「これから価値が上がる住宅地」と今の都市計画や不動産の法や制度にミスマッチがあります。制度がじゃまをし、つくりにくくしているのです。成長社会の社会構造から、成熟社会の社会構造の転換がまさに求められています。
本書では、おもに戸建て住宅地を対象にしていますが、ここでとりあげましたテーマは、既成市街地や複合開発地、集合住宅地など、つまり人間が住まう場では共通していることです。
読んでいただいたあと、街に出て、まわりをながめてください。今まであなたが気がつかなかった、すてきな変化が見えるはずです。それは、覆すべき八つの常識は、私たちが縛られている固定概念のほんの一部だということです。見方を変えると、街のなかには、新しい変化がどんどん生まれていることがわかります。
さあ、古い価値を捨て、新しい価値を共有しましょう。そして、すてきな魅力的な住宅地に多くの人が住めるようにしましょう。
そのためには、住宅地をつくる関係者の人たちは、「こんな住宅地」をつくりましょう。
行政は、「こんな住宅地」をつくれるように、法や制度をかえましょう。新しい制度をつくりましょう。そして、がんばってつくる人たちを応援しましょう。
住宅の購入者、居住者は、「こんな住宅地」を選んで住みましょう。
「こんな住宅地」とは具体的にはどんな住宅地か?
「これから価値が上がる住宅地」、その魅力にせまります。
2005年2月
齊藤広子
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