『建築文化』((株)彰国社)No. 671
人が「環境」を解釈するということ、解釈学という知の体系が「環境」をあつかうこと、この2つが人と実例を介して表現されている。
本書はフランスの哲学者フィリップ・ニス氏の日本滞在時に行われた7回のセミナーの記録をもとに構成されている。各章では精神病理学、哲学、景観工学、建築、ランドスケープの分野で活躍する5人の講義とニス氏との対話、田路氏の総括のテクストとニス氏の論文『解釈学の地平における環境の問題』を収録し、『環境の解釈学』を提示する複数のプレゼンテーションとして読むことができる。
興味深いのは、7人の異なる面々の対話/プレゼンテーション/テクストが、各自の「環境」解釈(環境との関係)をいかに表現しているか、という部分であった。ひとつの発見は、環境や風景に関する言説に「解釈学」のものさしをあてると、異分野の人が対話する際に起こりがちな言葉の問題、齟齬を再解釈できるということだ。セミナーを通して語られた環境を表現する多くの語彙を通じて、聴衆あるいは読者は、景観や風景等が表す対象を自身の解釈と照合する場ともなっただろう。環境の解釈学は、個と個、場、環境といった異なる対象とその意味が双方向に行き来する運動を通して、分野を超えた環境評価の体系になりうるように感じられた。
(山内彩子)
『新建築住宅特集』((株)新建築社)2004. 3
本書は、仏人哲学者のフィリップ・ニス氏が明治大学国際交流基金によって日本に滞在した機会を利用して開催された連続セミナーの記録。セミナーは、田路氏を司会に、ニス氏の講演が2回、建築、ランドスケープ、景観工学、精神病理学、哲学の第一線で活躍する5氏との対談が各1回ずつ、計7回行われた。内藤氏は、「空間意識」というキーワードを軸に、自分の制作の現場を解説。大橋氏は、和辻哲郎がテーマにした「風土」を、和辻とは別の仕方でとらえる試みを紹介している。「解釈とは、あらゆるものを新たに見ること、テキスト・作品・人との予期せぬ出会いによって変化する自分を発見することである」という姿勢が一貫している。
『新建築』((株)新建築社)2004. 3
本書は、ベルギー生まれの哲学者フィリップ・ニス氏が日本に滞在をした間に行われた7回の連続セミナーの記録である。各著者の講演記録、とその後の田路氏、ニス氏との対談という構成になっている。特筆すべきは、タイトル通り「環境」の解釈である。普段は無自覚に使用している「環境」という言葉がいかに広い意味をもち、人間の身体や精神と不可避的な関係をもちうるのか、考えさせられる。哲学者、精神医学者、ランドスケープ・アーキテクト、建築家など多角的な視点で語られている。
(A)
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