マンション 企画・設計・管理

はじめに


 マンションの実務に携わっておられる方々にとって、企画・設計から管理にいたる現場での業務推進上、幅広くかつまとまった知識を提供してくれる有用な本がない。確かに書店には、「マンションの賢い買い方」「地震に強いマンションを選ぶ」「マンションの快適インテリア」「マンションの保全と管理」「マンションの法律相談」等の“ハウツーモノ”や、マンションの計画・設備・構造・材料に関する専門書、あるいは、作家建築家によって設計されたマンションの図集等、実に多様な本が並べられ盛況である。
 ところが意外なことに、これらのおびただしい本のなかで、肝心の「マンションとは何か?マンション本体の構造や壁の内側のしくみあるいは設備システムはどうなっているのか?あるいは、これらに関連する企画・設計そして管理等の全体的概要を知りたい!」といったマンション実務者からの疑問・質問に応えてくれる、手軽な事典的解説書がない。そこで、そのニーズに応えるべく、マンションに関して基礎的かつ広範な知識を網羅した本書を上梓することにした。
 著者は、私と都市基盤整備公団(旧住宅・都市整備公団)関西支社の技術職員とそのOBである。周知のように、公団は戦後の高度経済成長期以降、大都市を中心に膨大な量のマンションを供給し、企画・調査から計画・設計・施工及び管理や建替に至るまで、実務面での多様な技術的蓄積を有している。このことからマンションに関して、上記のような本を書くとするならば、執筆者については公団職員の面々において他にいないと思い、16人の方々に引き受けてもらった。
 本書の内容は以下のように四つに分かれている。
(1)企画―マンションの歴史に触れたあと、よりよいマンションをつくる前提として不可欠な、企画あるいはマンションの性能保証について概説する。
(2)設計―マンションを構成している主要部分についてとりあげ、構工法を始め住棟・住戸の物的あるいは空間的なしくみ・特性あるいは関連技術の史的変遷、今後のあり方等に関して主に設計的視点からわかりやすく説明する。
(3)環境―住戸内外における様々な環境も重要である。マンションで暮すなかで基本的でかつ重要な日照・採光、通風・換気、温熱、断熱・防水そして音等をどう捉え、技術や設計面ではどのように対処され発展してきたかに関して、基礎からわかりやすく解説する。さらに、快適なマンションであるためには住戸内外の“緑”も不可欠であり、その効用についても述べる。
(4)ストック活用とマンションの今後―供給された後、管理していくうえでのマンション保全の方策、建替え等のストック活用、今後、発展・展開するであろうSIシステムについて述べたうえで、マンションのあり方に関しても言及する。
 以上のように、マンション本体の物的・空間的しくみだけではなく、どのようにしてマンションが企画・設計され、そして、今後のマンションがどうなるか等、21項目にわたって述べている。
 本書は、マンションの企画・設計や管理の実務に携わる方々を対象にした入門書である。使い方としては、全体を通読して幅広の基礎的知識を習得するもよし、また、自分の専門以外のところを必要に応じて事典的にみていくのもよしといった二つの方法があろう。
 また、実務者だけでなく建築学や住居学を専攻している学生の方々のマンションに関する一般的な教科書として、さらには、マンションに住もうと考えあるいは現在すでに住んでいる方々の手元に置いておくと便利なマニュアル書としても、活用していただければ幸いである。
2001年9月
都市公団関西集合住宅研究会
代表 増永理彦
 








 あなたは人目(2001.8.20〜)の訪問者です。