外国人居住と変貌する街

【コラム/すまい探訪】

セッツ・ステールさん(アメリカ)
シェアリングできる住まいがほしい


 セッツさんには、 友人と二人でシェアできる住宅を探して結局うまく見つからなかった経験がある。 若い欧米人たちには、 彼のように友人同士で住む“シェアリング”の希望が多い。 友人と住めば割安になるし、 プライバシーさえ保たれれば彼らはこのような住まい方にあまり抵抗はない。 しかし、 シェアできる住宅を探すことはかなり難しい。 日本にはシェアリングの慣習がなく、 家主は複数の個人が同居すると責任がはっきりしないと歓迎しない。 また仮に家主が認めても、 少し規模の大きい住宅のほとんどはファミリー向けのため、 各個室のプライバシーが十分確保されていない場合が多いからである。 (インタビュー/一九九二年三月)
 ぼくは、 大学卒業後一年くらいアメリカで働いていたが、 ジャーナリストになるための経験を積もうと思って日本に来た。 日本を選んだのは、 アジアの国を経験してみたかったことと日本では仕事が探しやすいと思ったから。 まったく日本語もしゃべれず、 知人も仕事のコネもなくいきなり日本に来てしまった。

 最初の住まいはテラスハウスで、 友人と二人で住んでいた。 友人はもともと別の人とシェアしていたが、 その人が一時外国に行くというので又貸ししてもらった。 一年後、 又貸ししてくれていた人が日本に帰るというので、 住宅を探そうとしたことがある。 でも、 この時は日本語がまだあまりうまくなかったせいか、 『アパマン情報』を見て電話すると「ああ外人ね、 だめだめ」と不動産屋に簡単に断られた。 理由を聞くと「大家がいやがる」ということだった。 高い家賃を払える欧米人なら専門の不動産屋もあって英語でも大丈夫だけど、 そうでない外国人は非常に苦労する。 日本の不動産屋は、 欧米人はみな五十〜百万円の家賃を払えると思っているようだしね。 結局その友だちは日本に戻ってこなかったのでもう一年住んだ。

 その後、 同居していた友人がほかの友だちと住むことになって、 新しい住宅を探さなければならなくなった。 この時には、 通信社に勤務し日本語学校にも通っていたので、 以前よりずっと上手に話せたせいか探しやすかった。 が、 やはり問題があった。 ほかの友人と二人で住もうと思い、 友人は多少家賃を多く払えるので八〇uくらいで家賃三十万円までという条件で探したが、 該当するものはファミリー向けの間取りでプライバシーの守れないものばかり。 それぞれの個室が離れていて、 LDKが十分広いものはなかった。 それに、 不動産屋で条件を言うと「男二人で広い所に住むのは疑わしい、 と大家がいやがる」と言われ、 あきれてしまった。

 結局二人で住むのをあきらめ、 文京区小石川に一人で住むマンションを見つけた。 仕事先の築地には、 東横線がもっとも便利だが、 あの沿線は家賃が高い。 敷金・礼金、 引っ越し費用、 電話、 ふとんなどで、 転居に百万円くらいかかってしまったけれど、 ぼくは下町的な場所、 伝統のある場所が好きなので、 文京区は悪くないと思ったし、 マンションの前に桜並木の坂があるのがとても気に入っている。

●プロフィール

アメリカ人、 ニューヨーク出身、 二十六歳、 未婚。
ジャーナリストとしての経験を積むために一九九〇年来日。

●居住歴

  1. 新宿区四谷、 二階建てテラスハウス、 規模約七〇u、 一階が居間、 二階が個室。 友人と二人で同居。 家賃十三万七千円。 友人のルームメイトが外国に行く間の又借り。 二年間居住。
  2. 文京区小石川、 十階建てマンションの三階。 1DK(六畳+DK)、 バス・トイレ付き、 家賃十万円。 不動産屋の紹介(図1・17、 18)。


セッツさんの部屋


セッツさんのすまい方


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