きんもくせい24号
(1996年2月9日)

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阪神大震災復興市民まちづくり支援ニュース
阪神大震災復興市民まちづくり支援
ネットワーク事務局発行

テキストのファーストアップはNifty GHA02037 つじさんによる

長田区に1戸でも多くの災害公営住宅を作りたい

震災復興長田の会、 代表呼びかけ人 上田耕蔵(神戸協同病院院長)

 1月20日、 長田区役所7階大会議室にて83人の出席で「震災復興長田の会」が発足した。

私が一応代表よびかけ人になっている。

軽い気持ちで引き受けたが、 集会に出てこれは大変だと思った。

私はだいたい走りながら考える、 あるいは走ったあとで考えるタイプの人間であるのにまた気づく。

期待は高いが、 果たして出来るか?やる以上はどうやるか?この点で当日の三谷先生の記念講演が非常に役だったのでまずそれから紹介したい。

(1)三谷先生の記念講演

 「記念」に相応しい?ざっくばらんの分かりやすい話であった。

 まず1年間のいきさつであるが、 4月に北野先生らと「長田のよさを生かすまちづくり懇談会」が発足、 長田のケミカル・商業の復興から始まり、 福祉の問題などを経て、 区画整理・再開発地区などの住民の勉強会、 連絡会として粘り強く展開した。

今年1月にはその世話人のメンバー、 住民らで「防災を語る会」を発足、 東京へ「市民語り部キャラバン」を派遣した。

「神戸を忘れんといてではなく、 受けた経験は日本全国に役立つ」という立場で行った。

13日には墨田区で500人、 翌14日には中野区で500人の都民が集まったが、 神戸の経験に涙し、 互いの防災・街づくりに大いに貢献できたと思う。

大地震でハードが潰れても人と人の結びつきがあればなんとかなる。

長田はまさに下町のよさ、 共生のよさが特徴といえる。

ただまちづくりで高層住宅が建ち、 人が戻っても、 どうも前と違うぞではダメだ。

 さて今後の地域の運動であるが、

  1. 行政を追いつめてはいけない。

    行政も行き詰まっている。

    いっしょに考えていこう(国に対しては違う態度が必要)。

    批判するだけだったら、 行政は「金がない」と居直ってくるだろう。

    例えば区画整理にかかっていない「白地」で、 住民自らが土地を探してきて行政に紹介する。

    住民がイニシアを取りつつ、 行政に建替えのパートナーになってもらう。


  2. 国は地方災害として切り捨てている。

    しかし運動すれば、 出来るという幻想をまいてはいけない。

    運動すれば国が個人補償をしだすから、 それまで待っていようでは何も進まない。


  3. なぜ若者が出ていったのか?若者がよりつく「しくみ」を作る。

    例えば地下鉄学園都市には4大学がある。

    彼らが遊ぶのは板宿までであとは長田を素通りして三宮へ行く。

    靴の仮設バザール、 アジアタウンなど魅力ある街づくりと合わせて長田に学生街を作ろう。

(2)震災復興長田の会の方針

 「阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議」の長田区版になるが、 活動方針として今の所次のように考えている。

  1. 仮設住宅の改善。

    現状の住宅復興計画では仮設住民は地元へ戻って来れない。

    神戸市の仮設3万戸。

    出るメドなく、 公営住宅希望者は7割、 家賃希望は3万円まで6割。

    対して、 神戸市の災害公営住宅の建設戸数は7500戸、 建設地は仮設と同様郊外が7割。

    仮設は21世紀に持ち越すのは確実である。

    仮設地域で中長期的に居住できる環境整備が必要となってくるだろう。

    今後もたくさんの人が住み続けざるを得ないから、 「まち」とならざるを得ない。

    援助が息長く必要。

  2. 白地地区での住宅作り。

    会員が適当な土地(400m2以上)を見つけてきて、 「ここに公営住宅を建てて下さい」という看板を出し、 行政へ交渉する。

  3. 長田区区内への災害公営住宅つくり。

    長田区はまとまった土地がなく、 区内の仮設は647戸しかない。

    災害公営住宅の1月までの発注状況を見ると、 合計2,910戸で新規の計画6,000戸の48.5%まで達成している。

    しかし長田区ではまだ70戸のみ!災害公営住宅の発注数を全壊+全焼家屋数で割ると、 東灘区・灘区・中央区は3〜4%台であるが、 長田区は0.4%と著しく低い水準である。

    このまま推移したら長田区にはほとんど作られないことになりかねない。

    いかにたくさんの家賃の安い公営住宅を作れるか!運動で1軒でもたくさん作りたい。

    有力な建設場所としては区画整理・再開発地区、 それに統廃合?による学校用地など。

    神戸市は最終の住宅計画を6月に出す予定としているが、 それまでに広い層の呼びかけにて長田区民の公営住宅建設への強い意向を表現したい。

    あわよくば、 国の住宅(用地費)補助アップを求めて市長とともに被災市民が国会請願へ……・?

  4. 福祉施設の建設。

    特別養護老人ホームは21世紀までに長田区で4カ所必要。

    ケア付き仮設の優位点を生かしたグループホーム(家と老人ホームの長所をミックスした共同住宅、 地域に開かれボランテイアも助けやすい)の建設も是非進めたい。

 まだ始まったばかりですが、 下町長田に関心を持つ多くの方と協力、 共生してとりくんで行きたいと思います。

よろしくお願いします('96.2/1記)。

神戸市各区の全壊全焼戸数・仮設数・災害公営住宅発注状況(戸、 %)
仮設戸数全壊+全焼仮設/全壊焼災公発注済災公各区%災公/全壊焼
東灘区3,88311,50934%42214.5%3.7%
灘区98612,188850417.34.1
中央区3,7965,019762037.04.0
兵庫区6549,43271886.52.0
長田区64716,4454702.40.4
須磨区2,1257,19230461.60.6
垂水区2,30892250975125.8816
北区5,83811849472819.7238
西区8,941044515.3
合計29,17861,99547%2,910100%4.7%
#「災公」は災害公営住宅を指す。

上の表が表に見えない方はこちらを見てください

図
グラフ・激震6区の災害公営住宅発注数/全壊全焼戸数

p1,4

新在家南地区復興まち・すまいづくりの実践報告(その2)

(株)ジーユー計画研究所 後藤 祐介

図
図・新在家南地区位置図

それから

 本稿は「きんもくせい」第12号
(1995年7月11日)掲載記事(その1)の続編であり、 できれば旧原稿と併せて見て欲しい。

 その後、 約半年が経過したが、 この間に「復興まちづくり」としては、 震災以前からの懸案であった「まちづくり協定」が神戸市当局と締結の運びとなり、 酒蔵の道や旧西国浜街道の整備計画及び工場跡地等の土地利用の方向づけ、 誘導策が進んだ。

 一方、 「復興すまいづくり」としては、 戸建家屋の再建がぼつぼつと進む中で、 4件の共同建替え事業と1件の官民共同の賃貸共同住宅建設事業が着工に向けて進んでいる。

 本稿ではこれらの新在家南地区におけるその後の復興まち・すまいづくりの推進状況を報告する。

復興まちづくり

まちづくり協定の締結

 当地区は、 旧西国浜街道沿いに位置する灘五郷の一つの「西郷酒造地区」で、 全域が準工業地域である。

そのため、 震災以前から用途混在の回避や酒蔵のまちとしてのまち並み誘導を図ること等のために「まちづくり協定」を検討していた。

 今回の震災では、 地区内の家屋の約8割が倒壊した。

その復興にあたっては「まちづくり協定」が有効と考え、 復興まちづくり構想を検討する一方で、 まちづくり協定運営委員会を設置し、 協定運営細則を煮詰め、 神戸市当局と下記のような内容のまちづくり協定を今年度中(3月まで)に締結する運びとなった。

図
図・旧西国浜街道のまち並みイメージ

―新在家南地区のまちづくり協定項目―

  1. 建築物の用途の制限(風俗営業等)
  2. 荷さばき等の駐車に供される用地の設置
  3. ファミリー形式の住居の推奨(ワンルームマンションの制限)
  4. 建築物等の意匠のまち並みへの配慮
  5. 周辺環境への配慮

酒蔵の道の再生計画の推進

灘五郷のまちとして、 震災以前にも整備されつつあった「酒蔵の道」は、 今回の震災でほぼ全壊した。

当地区の復興にあたっては、 この道の再生を重点目標の一つとし、 まちづくり協定や各種住環境整備手法を活用し、 専門家と行政及び住民、 企業、 開発事業者が協調し、 酒蔵の道の再生に取組んでいる。

図
酒蔵の道のまち並みイメージ

図
検討中のまちづくり構想(案)

p2

復興すまいづくり

4件の共同建替えが事業化へ

 当地区では、 現在、 4件の共同化事業が工事着手に向けて進んでいる。

このうち(1)、 (2)、 (3)は、 第12号の時点で報告していた物件で、 その後、 新しく(4)が軌道に乗っている。

 当地区は、 神戸市六甲地区住宅市街地総合整備事業区域であるため、 4件とも住市総の共同化補助事業として推進している。

1)共同建替え型ミニ・ハーフ区画整理
 (1)、 (2)の3丁目−A、 Bは、 共同化としては別々に出発したが、 敷地が隣接しているため、 その後一体開発として、 幅員3mの公道を廃止し、 新しく4.3mの公道を付け替える作業を進めている。

(4)の4丁目−Dも、 幅員2.5m未満の公道を幅員4.3mで付け替える計画を進めている。

このため、 敷地面積は減少し(減歩と言える)するが、 権利者は共同建替え事業が成立する条件と引き替えに納得している。

2)同一「デベ」で事業推進
 同一地区内で近接して複数の共同化が進められていることから、 同一ディベロッパーで事業の推進を図っている。

 事業推進にあたっては、 表に示すよな、 地元権利者、 行政、 総括コンサル−専門コンサルグループ、 ディベロッパー、 ゼネコン等で体制を組み、 特に建築設計士、 測量・開発申請(土木技士)、 不動産鑑定士、 司法書士、 弁護士等の専門家によるプロジェクトチームを組織し、 事業推進のための対応を図っている。

3)まち並みに配慮した建築意匠
 4件の共同化建築物は全て旧西国浜街道に面して立地しており、 建築物や工作物、 外構等の意匠は「酒蔵のまち」「歴史街道沿いのまち並み」のイメージを持った内容となるよう努めている。

官民協働の賃貸住宅の建設

 (5)の4丁目−Eは、 木造長屋の倒壊跡地における耐火造賃貸共同住宅の再建事業で、 地主(見掛氏)と神戸市住宅供給公社の協働による特目賃(災害復興特定目的借上公共賃貸住宅制度−地主が建て、 公社が管理運営し、 従前借家人が再入居出来る)事業である。

 比較的老人が多く、 かつ、 木造賃貸住宅が多かった当地区にとっては、 このような地域貢献型住宅建設への期待は高い。

次への展開

 今回報告した共同建替え事業等は、 春から夏にかけて着工を予定しており、 現在はボーリング、 実施設計段階に入っている。

 次の展開としては、 本契約、 工事段階に入って行くとともに、 コーディネート業務としては、 共同ビルの維持管理方策の検討を始める一方で、 未着手敷地への掘起こし作業を行って行く必要があると考えている。


図
・新在家南3丁目-A、 B共同建替え推進体制

図
4丁目-D 道路付替え計画図

図
酒蔵のまち並みを意識した建築意匠(案)・3丁目A・B棟

図
新在家南地区内共同建替え等事業計画一覧(H.8,2.10現在)

p3

INFORMATION

2地区で区画整理区域の事業計画案縦覧

 六甲道西地区(神戸市灘区)、 松本地区(神戸市兵庫区)では、 地元のまちづくり提案をふまえ、 土地区画整理事業の事業計画縦覧が1/24〜2/6まで行われました。

これは、 鷹取東地区(JR以南)に次いで行われるものです。

図
両地区位置図

図
六甲道駅西地区・事業計画縦覧風景

図
松本地区・事業計画縦覧風景

「ランドスケープ復興支援会議」が設立されました

 2月6日、 神戸Fビルで第1回のランドスケープ復興支援会議(略称:阪神グリーンネット)が開かれました。

 このネットワークはランドスケープに関わる専門家の集まりで、 まちの緑化−生垣づくりや苗木の植裁、 仮設住宅でのサラダ畑づくり等への専門的な技術支援を通して、 実践的に復興まちづくりに関わっていこうとしています(詳しい内容は、 次号の「きんもくせい」に掲載予定)。

図
第1回ランドスケープ復興支援会議(2/6)

ネットワーク事務局より

○“復興まちづくりフラッグ”をつくります

 復興まちづくりハウスに設置する旗をつくります。

大きさはA0倍サイズ、 ポリエステル製、 色は桃、 青、 黄、 緑、 紫の5種類です。

必要な方はネットワーク事務局までお申し込み下さい。

図

『復興市民まちづくり』VOL.4は、 さらに収録ニュースが増加

ネットワーク会議

−神戸・西部市街地連絡会−
〈テーマ〉:白地区域での『土地区画交換事業』(ミニ区画整理)の事例勉強

■連絡先:阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク事務局
〒657 神戸市灘区楠丘町2-5-20
まちづくり株式会社コー・プラン
TEL.078-842-2311 FAX.078-842-2203
担当:天川・中井

〒657 神戸市灘区六甲台町1
神戸大学工学部建設学科
TEL.078-803-1029 FAX.078-803-1029
担当:児玉

P.4


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このページへのご意見は学芸出版社/前田裕資

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