このあたりの被害は相当大きく、 木造住宅のほとんどが倒壊した。
運よくこの年末に事務所の隣の鉄筋コンクリートの建物を借りていたおかげで、 何とか仕事をすることができている(写真参照)。
きんもくせい通りの現況。
右奥の建物が現事務所
事務所は1月26日から解体に取り掛かり、 倒壊した事務所跡地を整地し、 テントを建て、 周辺住民の方々も利用できるようにした(現在家具置場等に利用されている) 。
建築家の宮脇檀さんの協力を得て建替の話し合いの場を持ち(写真参照)、 嘉村さん、 奥村さん、 梅村さん(コー・プランの大家さん)の同意を得、 3敷地で協調建替を行う方向で話が決まった。
今後この案を出発点としてお隣さんたちと検討を交えて行くことにしている。
敷地東方には、 レンガ造りの工場を再利用した商業施設「六甲23」も全壊し、 今はもう影も形もない。
昔ながらの酒蔵もほぼ全壊状態である。
当敷地では容積率に余裕がある(300%)こともあいまって、 比較的スムーズに共同化への方向づけがなされた。
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6地区233haの建築制限区域(2/1、 建築基準法第84条)への土地区画整理事業・市街地再開発事業等の計画(3/17、 5地区が都市計画決定)が示された。
また、 壊滅的な被害をうけた神戸の既成市街地の大部分 5,887haが震災復興促進区域(2/16、 神戸市震災復興緊急整備条例)、 その中に、 24地域・1,225haの重点復興地域が指定された(3/17)。
新たな都市計画事業の6地区で4%、 24の重点復興地域でも21%の被災市街地をカバーするに止まる。
こうした面的な地域整備の積み重ねが、 震災復興の基本であることは確かだが、 しかし私はこれらに合わせて、 神戸の市街地全体の都市構造への将来提案(この際やらねばならないリストラクチュアプラン)とそれらを支える復興都市計画支援が必要不可欠と考える。
それでは復興都市構造計画の取組はどうなっているか。
震災復興計画ガイドライン(2/7〜3/末、 神戸市復興計画検討委員会)から復興計画(6/末予定、 神戸市復興計画審議会)が現在検討中であるが、 私は神戸復興に向けた都市空間計画として次のような「神戸の都市構造の再構成」を提案する。
非常時に向けての安全都市基準による災害に強い都市、 平常時には都市基盤総合整備によるアメニティの高い都市が目標である。
ここでは河川緑地軸、 水際緑地軸、 市街地環境軸と、 防災緑地核、 安全活動核の提案を図示した。
また、 水際緑地軸は大きな水際公園の確保とハーバーウォーク(なぎさ海道)の連続とともに、 高架が破壊した阪神高速道路神戸線の一時的休止と別路線による地下化と水際緑地軸の一体整備を提案する。
同時にこの地区は被災市街地復興特別措置法に基づく「復興推進地域」に指定された。
地区名は以下のとおり。
神戸市:森南(16.7)、 六甲道駅周辺(25.6)、 松本(8.9)、
御菅(10.1)、 新長田駅周辺(89.2)
芦屋市:西部(21.2)、 中央(13.4)
西宮市:森具(10.5)、 阪急西宮北口駅周辺(34.6)
宝塚市:仁川駅前(1.6)、 売布神社駅前(0.9)、 宝塚駅前(0.9)
北淡町:富島(20.5)
以上合計13地区、 254.8ha *()内は面積ha
これらの地区のまちづくりは、 都市計画決定により、 とりあえず次のステップに入る。
神戸市は当ネットワークに対しても協力支援の要請を示しているが、 都市計画決定前からそうした体制への配慮をすべきではなかったか(これまで神戸市では「まちづくり協議会」方式の豊富な実践がある)。
まちづくりへの相互関係の構築のためには、 住民の行政不信の解消が第一と思われるが………。
内容:
主に家が全壊した人の実情、 及びまちづくりに対する意見を掲載しています。
神戸に出てきて30年、 怪我をしたりでやっと食べて行ける程度。
50代なので仮設住宅の入居は一番後回し。
6、 7万するマンションはやっていけないが、 建替られる借家もきっと値上がりするだろう。
仮設も1年しか居られない。
これから年をとって無理はきかなくなるが、 それでも先はまだ長い。
年がら年中働きづめで、 それでも低収入という我々を行政は見放している気がする(兵庫区永沢町・男・55歳)。
住み慣れた土地や近所の友人と別れたくないので、 長屋が建替られるともう一度住むつもりですが、 運び出せずに残っている荷物の置き場所に困っています。
建替られる間、 仮設も申し込んでいますが、 引っ越し費用はどうなるのでしょうか。
年金だけで細々と暮らしているので、 こういう目に見えない出費が痛い(長田区役所で会った人・女・68歳)。
仮設住宅が当たるまでマンションを借りようとしたけれど、 敷金が100万円もするし、 出るときは40万円も引かれる。
家賃も高くて、 これまでなかなか親の家を出れなかったが、 今回はその親の家が全壊。
外国に住んでいる友人は皆、 家に限っては日本ほど苦労はないと言う。
家というものは国民の生活基盤。
例えばパリのように普通の市民が安心して住める共同住宅を作ってほしい(兵庫区湊川町・女・33歳)。
長田駅前が高層ビルの通りになるなんて地震に遭っていない人が考えているのではないか。
この地震で高層ビルは怖いと皆思っている。
高層で火災が発生したり、 計算できない被害が出る恐れは十分ある。
また、 震災で見直された人情も居着かなくなる(西区伊川谷町・男・34歳)。
古くて家賃の安い家にしか住めない貧しい人達がたくさん被害にあって、 胸が痛みます。
政府は国民の住宅対策について、 戦後50年こんなに日本が豊かになったのに何故見過ごしてきたのでしょうか。
私自身結婚して今の家を買ったが、 市営住宅などがもっとあればローンを抱え込むことがありませんでした。
家を持ちたい人ばかりではありません。
安心して住める住宅がほしい。
それから避難所のお年寄りを早く救ってあげて!(北区日の峰・女・48歳)
誰しもが、 テレビや新聞の報道で知っているつもりでも自分で歩くと愕然とするというが、 宮西さんのバイクの背中にかじりついて市内を走った私の感想もまさにその通り。
さて訪問の意図は、 我々の「日本都市計画学会・復興問題小委員会」組織が何をなすべきか、 なし得るかを探ることにあった。
翌日には阪大の鳴海さんや市大の土井さんなど、 また何人かのプランナーの皆さんも見えて状況は把握できた。
要するに私たち東京部隊は、 阪神の関係者の意欲と行動力を裏から支える役割を果たすべきとの結論である。
その当面の内容は、 1)被害や復興の情報を正確に捉えて学会員にいちはやく伝えること、 2)地元のまちづくり関係者に役立つ(かもしれない)資料・意見・提言等、 さらには人材を送り込むこと、 この2点となろう。
都市計画上の研究課題を整理し学会員に提示していく役割もあろうが、 それは少しあとのことでよい。
帰京後、 緊急報告会(1/30、 3/15)の開催、 編集委員会による「都市計画・緊急特集号」の刊行(3/1)、 建物被災調査へのボランティアの派遣(2月初旬)等に取り組んだ(その際、 「きんもくせい」の、 専門家としての記事は信頼度が高く大変有り難かった)。
少しは1)2)に役立ったと思うが、 後方支援部隊としてまだまだなすべきことは多かろう。
ご意見をお待ちしたい(この他、 東京での民間支援ネットワークも成立し、 「じんちょうげ」の刊行に至っていることはご承知の通りである)。
以下に(神戸市での)復興まちづくりへの個人的感想を4点。
それをプランナーネットワークで面倒見ようというのも素晴らしい。
但し、 零細権利の市街地像との乖離が大きく、 実施過程は大変だろう(ところで復興ニュース3号の、 整然とした街区に超高層が建ち並ぶパース、 あれは何だ!あれじゃ市民は恐れ慄く)。
真野にがんばりきってもらいたいが、 他の地区に現場対応がどの程度可能か。
東京から支援の人材という手も検討に値しよう。
紛争回避の別途法を要求すべきであるし、 当面する現場での辛い対応をどうしたらいいのだろうか。
都立大の高見沢先生のご提案並びに以下の方々のご協力(1次中継点)により、 「きんもくせい」が発信されることになりました。
また、 以下のネットワーク網以外については従来通り下記事務局より発信します。
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関西建築家ボランティアより
魚崎地区(神戸市東灘区)復興のため「魚崎地区まちづくりシンポジウム」が開催されます。
(1)住民・建築家・都市プランナー・法律家の参加による
パネルディスカッション、 まちづくり宣言の採択
(2)パネル展示(9:00〜)―地区全体模型(1/500)、 コンテナ住宅による定住プラン など
西神戸だより
神戸市兵庫区にお住まいの喜多村みどりさん(フリーライター)から「きんもくせい」に編集協力の依頼があり、 市民の生の声を拾っていただきました。
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都市計画学会本部(東京)からの後方支援
東京都立大学教授 高見沢邦郎
震災後二度目の神戸入りとなる吉川仁さん(既に1月18日、 10時間以上を費やしてバイクで神戸入り)と連れだって、 神戸大学建設学教室やコー・プランをお訪ねし、 皆さんにお会いできたのは1月28日のことだった。
(3月9日 記)ネットワーク事務局より
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