きんもくせい05号
(1995年3月19日)

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阪神大震災復興市民まちづくり支援ニュース
阪神大震災復興市民まちづくり支援
ネットワーク事務局発行

テキストのファーストアップはNifty GHA02037 つじさんによる

共同化、 協調化のまちづくり始まる

“きんもくせい”通りの協調建替案(楠丘町)

事務所が倒壊して
 当ネットワーク事務局があるコー・プランは、 1月17日の大震災により全壊した。

このあたりの被害は相当大きく、 木造住宅のほとんどが倒壊した。

運よくこの年末に事務所の隣の鉄筋コンクリートの建物を借りていたおかげで、 何とか仕事をすることができている(写真参照)。


きんもくせい通り位置図


きんもくせい通りの現況。
右奥の建物が現事務所

 事務所は1月26日から解体に取り掛かり、 倒壊した事務所跡地を整地し、 テントを建て、 周辺住民の方々も利用できるようにした(現在家具置場等に利用されている) 。

周辺への呼びかけ始める
 2月に入ってからお隣さんたちに、 お互いに協力して建て替える話を始めた。

建築家の宮脇檀さんの協力を得て建替の話し合いの場を持ち(写真参照)、 嘉村さん、 奥村さん、 梅村さん(コー・プランの大家さん)の同意を得、 3敷地で協調建替を行う方向で話が決まった。

協調建替案について
 協調建替の基本方針は以下のとおり。

  1. 0ロット協調化(隣戸間の壁の隙間をあけない)


    断面スケッチ

  2. 鉄筋コンクリート3階建

  3. 道路沿い縦列駐車場(各戸)、 上部パーゴラ

 この基本方針をもとに、 宮脇さんの第1次案ができた。

今後この案を出発点としてお隣さんたちと検討を交えて行くことにしている。


宮脇さんを囲んで建替の打ち合わせ(2/19)


協調建替イメージ図

新在家南町の共同建替案

ほぼ全壊の新在家地区
 当敷地は阪神高速道路の南側に位置し、 ほぼ全壊状態である。

敷地東方には、 レンガ造りの工場を再利用した商業施設「六甲23」も全壊し、 今はもう影も形もない。

昔ながらの酒蔵もほぼ全壊状態である。

共同化に至るまで
 新在家南町は、 震災前から当ネットワークの一員である後藤氏(ジーユー計画研究所所長)のサポートの下、 まちづくり協議会を結成して地元主体のまちづくりを行ってきている。

当敷地では容積率に余裕がある(300%)こともあいまって、 比較的スムーズに共同化への方向づけがなされた。


断面計画図

計画諸元
〈現 況〉 区域面積:730m2
      用途別件数:住宅6件、 併用店舗6件
〈計 画〉 用途地域:準工業(300/60)
      延床面積:約2,650m2
      容積率 :290%
      住宅戸数:31戸
      事業手法:優良建築物等整備事業、 等価交換事業

p1


神戸市復興都市構造計画への提案

まちづくり(株)コー・プラン 代表 小林郁雄

 神戸復興にむけて、 その事業計画が動き始めた。

 6地区233haの建築制限区域(2/1、 建築基準法第84条)への土地区画整理事業・市街地再開発事業等の計画(3/17、 5地区が都市計画決定)が示された。

また、 壊滅的な被害をうけた神戸の既成市街地の大部分 5,887haが震災復興促進区域(2/16、 神戸市震災復興緊急整備条例)、 その中に、 24地域・1,225haの重点復興地域が指定された(3/17)。

新たな都市計画事業の6地区で4%、 24の重点復興地域でも21%の被災市街地をカバーするに止まる。

 こうした面的な地域整備の積み重ねが、 震災復興の基本であることは確かだが、 しかし私はこれらに合わせて、 神戸の市街地全体の都市構造への将来提案(この際やらねばならないリストラクチュアプラン)とそれらを支える復興都市計画支援が必要不可欠と考える。

復興都市構造計画

  面規制(用途地域・震災地区計画)
  面整備(区画整理・再開発/地区改良・住市総)
  軸構成―都市軸/市街地環境軸
     ―緑地軸/河川緑地軸・水際緑地軸
  拠点配置―(防災)緑地核[5ha程度]
      ―(安全)活動核[駅前・シビックセンター]

復興都市地域計画

  地域構成計画―まちづくり計画
  復興重点地区計画[アクションエリア]
     →区画整理・再開発事業地区
  復興拠点地区計画[プログラムエリア]
     →重点復興地域
  復興再生地区計画[リハビリテーションエリア]
     →震災復興促進区域

復興都市計画支援

  復興まちづくり支援ネットワーク
     市民まちづくり支援NPO
  復興まちづくり情報センター
     復興まちづくりニュース

 それでは復興都市構造計画の取組はどうなっているか。

 震災復興計画ガイドライン(2/7〜3/末、 神戸市復興計画検討委員会)から復興計画(6/末予定、 神戸市復興計画審議会)が現在検討中であるが、 私は神戸復興に向けた都市空間計画として次のような「神戸の都市構造の再構成」を提案する。

  (2月21日記、 3月24日改訂)


神戸市復興都市構造計画案

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84条区域の都計決定される

 建築制限区域(建築基準法84条に基づく)の都市計画決定は、 各市町及び兵庫県の都市計画審議会を経て、 3月17日に行われた。

同時にこの地区は被災市街地復興特別措置法に基づく「復興推進地域」に指定された。

地区名は以下のとおり。

 神戸市:森南(16.7)、 六甲道駅周辺(25.6)、 松本(8.9)、
     御菅(10.1)、 新長田駅周辺(89.2)
 芦屋市:西部(21.2)、 中央(13.4)
 西宮市:森具(10.5)、 阪急西宮北口駅周辺(34.6)
 宝塚市:仁川駅前(1.6)、 売布神社駅前(0.9)、 宝塚駅前(0.9)
 北淡町:富島(20.5)
  以上合計13地区、 254.8ha   *()内は面積ha

 今回の都市計画決定に至る経過で、 拙速すぎるやり方、 地元住民の多くが被災している中で十分な説明がない、 などの批判が集中したことを受け、 県審議会では「今後住民と十分意見交換を進めること」という付帯意見がつけられた。

 これらの地区のまちづくりは、 都市計画決定により、 とりあえず次のステップに入る。

神戸市は当ネットワークに対しても協力支援の要請を示しているが、 都市計画決定前からそうした体制への配慮をすべきではなかったか(これまで神戸市では「まちづくり協議会」方式の豊富な実践がある)。

まちづくりへの相互関係の構築のためには、 住民の行政不信の解消が第一と思われるが………。

関西建築家ボランティアより

 魚崎地区(神戸市東灘区)復興のため「魚崎地区まちづくりシンポジウム」が開催されます。

西神戸だより

 神戸市兵庫区にお住まいの喜多村みどりさん(フリーライター)から「きんもくせい」に編集協力の依頼があり、 市民の生の声を拾っていただきました。

主に家が全壊した人の実情、 及びまちづくりに対する意見を掲載しています。

p3

都市計画学会本部(東京)からの後方支援

東京都立大学教授 高見沢邦郎

 震災後二度目の神戸入りとなる吉川仁さん(既に1月18日、 10時間以上を費やしてバイクで神戸入り)と連れだって、 神戸大学建設学教室やコー・プランをお訪ねし、 皆さんにお会いできたのは1月28日のことだった。

誰しもが、 テレビや新聞の報道で知っているつもりでも自分で歩くと愕然とするというが、 宮西さんのバイクの背中にかじりついて市内を走った私の感想もまさにその通り。

 さて訪問の意図は、 我々の「日本都市計画学会・復興問題小委員会」組織が何をなすべきか、 なし得るかを探ることにあった。

翌日には阪大の鳴海さんや市大の土井さんなど、 また何人かのプランナーの皆さんも見えて状況は把握できた。

要するに私たち東京部隊は、 阪神の関係者の意欲と行動力を裏から支える役割を果たすべきとの結論である。

その当面の内容は、 1)被害や復興の情報を正確に捉えて学会員にいちはやく伝えること、 2)地元のまちづくり関係者に役立つ(かもしれない)資料・意見・提言等、 さらには人材を送り込むこと、 この2点となろう。

都市計画上の研究課題を整理し学会員に提示していく役割もあろうが、 それは少しあとのことでよい。

 帰京後、 緊急報告会(1/30、 3/15)の開催、 編集委員会による「都市計画・緊急特集号」の刊行(3/1)、 建物被災調査へのボランティアの派遣(2月初旬)等に取り組んだ(その際、 「きんもくせい」の、 専門家としての記事は信頼度が高く大変有り難かった)。

少しは1)2)に役立ったと思うが、 後方支援部隊としてまだまだなすべきことは多かろう。

ご意見をお待ちしたい(この他、 東京での民間支援ネットワークも成立し、 「じんちょうげ」の刊行に至っていることはご承知の通りである)。

 以下に(神戸市での)復興まちづくりへの個人的感想を4点。

ネットワーク事務局より

 「きんもくせい」のファックスネットワークができます。

 都立大の高見沢先生のご提案並びに以下の方々のご協力(1次中継点)により、 「きんもくせい」が発信されることになりました。

また、 以下のネットワーク網以外については従来通り下記事務局より発信します。

大学関係

コンサルタント関係

■連絡先:阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク事務局
〒657 神戸市灘区楠丘町2-5-20
まちづくり株式会社コー・プラン
TEL.078-842-2311 FAX.078-842-2203
担当:天川・中井

〒657 神戸市灘区六甲台町1
神戸大学工学部建設学科
TEL.078-803-1029 FAX.078-803-1029
担当:児玉

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このページへのご意見は学芸出版社/前田裕資

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