阪神大震災復興市民まちづくり
vol 7
序文
復興だ、 被災者支援だと、 もう言わない
阪神・淡路大震災から「まちの再生」に向けた市民まちづくりの取り組みは、 今、 新しい段階を迎えている。 区画整理など都市計画事業地区では、 多くのまちづくり協議会が結成され、 住民と行政との対話による地区復興が曲がりなりにも進んできている。 誘導型事業が導入された重点復興地域などで、 震災以前からの住民活動の蓄積があるところでは、 これまでの「まちづくり協議会方式」がなんとか機能している。 そうした中で、 いよいよ問題がクリアになってきたのが、 いわゆる白地区域といわれるその他の被災市街地の大部分を占める地域の再生である。 兵庫県や神戸市の復興計画推進部局も、 地域の産業雇用とともに一般被災市街地(白地区域)のまちづくりを現今の主要課題として取り上げ始め、 「HAR基金」や「阪神・淡路まちづくり支援機構」などの活動対象も、 まさにそうした地域の困惑している人々である。 まちづくりプランナーなどからなる私たち「復興市民まちづくり支援ネットワーク」は、 震災直後からそうした白地区域とそこでの多様なまちづくり活動への対応を主題にスタートしたのだし、 これからも焦点はそこにある。
今後の震災復興市街地整備の最大課題であるこうした白地区域において、 調査・計画・制度など根本的対応策が検討される必要があるが、 緊急即時に取り組むべきこととして、 次の4点をとりあえず提案したい。
1。 白地区域整備フレームの検討
◇第2ステージの都市計画事業地区(組合型再開発、 区画整理事業など)、 住宅整備型事業地区(地区改良事業など)の検討
◇包括的地区復興事業補助(アメリカのコミュニティ・ブロック・グラントなど)の導入検討
2。 まちづくり協議会の役割重視と専門家派遣制度の拡充
◇白地区域の面的まちづくりを担うまちづくり協議会の設立支援
◇都市計画事業地区と比べて桁違いに乏しい専門家派遣費用の拡充(ボランティアでなく、 NPOとして継続できる採算ベースにあった費用負担)
3。 共同化事業(特に住宅共同再建)への特段の助成
◇密集市街地における共同化・協調化事業の促進・支援と法制化検討
◇事業費補助の拡大(現状の15%〜20%からせめて50%程度へ)
4。 密集市街地での建築不能敷地(接道不良宅地など)への対応
◇密集市街地小規模緑地認定事業といった有効空地としての位置づけ(5年間ほどの固定資産税免除、 借地による住民広場利用など、 無理に建てなくてもよい方策)
◇接道不良宅地などにおける無届けや不法建築の徹底排除
こうした白地区域におけるまちづくりは、 震災復興とか、 被災者支援とか、 いっていてもはじまらない。 ましてや公的個人補償に期待する「金さえあれば」何とかなるという問題ではない。 21世紀の市民社会、 地域づくりに向けた、 住民自らの自律した志に基づく「自立と連帯のまちづくり」が求められているに他ならない。
きのう神戸市長田区鷹取地区の住民と支援する人々による「復興まちづくりまつり/第1回世界鷹取祭」(11月22日〜24日)がおわった。 もうじき神戸から東京へ行って、 地震のあとに生まれた芸術を発表する「兵庫アート・ウィーク・イン東京」(1月11日〜31日)がはじまる。 神戸復興塾まちづくり仮想大学の準備もできた。 誰かにたのむわけでなく、 自分たちではじめる萌芽と位置づけたい。
1996年11月25日
阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク
まちづくり株式会社コー・プラン 小林郁雄
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