『地域開発』((財)日本地域開発センター) 2003. 8
本書は、街づくりの好例とされる市町村の首長(および場合によってアドバイザー)と、蓑原氏の対談・鼎談集である。
取り上げられている16の自治体は、小都市・地域中核都市・大都市圏内の都市・大都市の4つのカテゴリーに分けられていて、都市の状況に応じた街づくりの課題と方向性が見出せる。対談形式であるため、読み易い。加えて、対談相手もさすがに街づくりの先進事例と言われる自治体の首長だけあって、内容も前向きで生き生きとしている。
地方分権が進む中、首長のリーダーシップの重要性は増しているが、身近な街づくりに関わる市町村長の役割は、都道府県知事とはまた違ったものがある。本書を通して見えてくるのは、市民の声に耳を傾け、地域の資源も活かしながら、市町村長自身が明確な考えと強い実行力を持って街づくりに取り組んでいる姿である。
行政や民間のリーダーだけでなく、首長を選ぶ有権者の方々にも是非読んでいただきたい本である。
『建築士』((社)日本建築士連合会) 2003.4
INAX社の広報誌「エスプラナード」は、具体的な街づくりによって街の景観、環境が著しく改善されている市町村の実例をシリーズで紹介して来ている。この広報誌の各号の巻末で、編著者と市町村長さんと、なぜ、街づくりが上手くいっているか、どのような方法で成功したか、今後の展望などについて、対談あるいはてい談したものを、幅広い都市再生の動きが起こっている中で、時期を失せずに、このような報告を出版するべきと、編著者の強い希望で上梓された。
編著者の蓑原氏は建設省、茨城県で都市計画と住宅行政の政策立案と実施の現場を経験しており、対談の中で十分その経験を披露し、話に厚みを持たせている。また、対談前に十分に資料を読み、町中を見て廻り、優れたリーダーシップの対談者から上手く街づくりの話を引き出している。
地域の実態に即した街づくりを動かすには、強い意志と持続的な合意形成の努力がいる。官民を問わない、街づくりの全過程を引っ張るリーダーシップの存在が不可欠である。また、街づくりのリーダーシップの必要性の高まりの中で、特に、統合力としての行政のリーダーシップが欠かせなくなっている。このようなリーダーシップを発揮するのは、やはり市町村長の統合力、調整能力に期待するところが大きい。
そういう意味で本書は、福祉、教育、住宅、公共輸送と街づくりの課題を広範囲に議論し、統合力と調整手腕を発揮した、市町村長の本音に迫った貴重な対談集である。
(吉木 隆)
『建築士事務所』((社)日本建築士事務所協会連合会) 2002.12
福祉、教育、住宅、公共輸送と、街づくりの課題を広範に議論し、統合力と調整手腕を発揮できる首長は少ないが、確実に進む地方分権の現場で彼らのリーダーシップは、今後ますます期待される。本書は街づくりに臨む首長の本音に迫った貴重な対談集。
バーチャルではないリアルな街、自らつくる文化の街、ニーズに即せば街づくりは総合行政、都市のアイデンティティを求めてという4つの興味深いテーマに即して、16人の首長が対談、インタビューの形式で語る。登場するのは出石、長浜、小布施・佐久、上越、会津若松、松江、岡山、金沢、山形、川口、武蔵野、横須賀、川越、江戸川、広島、横浜の16自治体で、いずれも独自の街づくりで注目されている自治体だ。
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