7割以上の製図試験受験生が資格学校に通うこのご時世でありながら、なおエスキースの手法を求められて、本書を手に取られたのだと思います。その熱意に敬意を表すると共に、そういうあなたに是非とも合格していただきたいという想いで筆を進めました。
本編でも展開していますが、「一級建築士設計製図試験」という試験制度に合格するためには、試験制度を分析し、試験制度に沿った解決方法としての解答を作り出す能力が求められます。しかし、一方でそれは単なる試験ノウハウの丸暗記になる恐れもありますし、そもそもそんな分析で建築の未来をゆがめている可能性も十分あります。
そこで私たち学科製図.comとしては、この試験を施主=クライアントに見立て、クライアントが提示する条件を分析し、最適解を限られた時間内に表現する技術を磨く練習台として、シミュレーションしてみてはどうか? という問いを立てました。そうすることでこの製図試験という特殊性が持つ歪みを、一般解化できるのではないかと思ったからです。
この製図試験はゴールではありません。ここが最高にして最低限のスタートラインです。是非、拙著で製図試験用のエスキースを体験していただき、その特殊性を学ぶ中でこの方法論が実はいろんな局面で使えることを感じ取っていただきたいと願っています。
最後になりましたが、相変わらずの遅筆と非論理的な文章をまとめ上げられたのは、知念靖広氏をはじめとする学芸出版社のスタッフの皆さんのおかげです。そしてスタッフを熱く突き動かしている原動力は、本気で合格しようと決意してこのテキストを手にとっていただいていた受験生の皆さんの熱意以外のなにものでもありません。
合格するその日まで、どこまでも共々に戦える日々を楽しみにしています。
平成22年7月
学科製図.com主宰 曽根 徹
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