作図方法が中心だった製図試験対策テキストに対して、エスキースだけを扱った拙著『エスキースアプローチ』の出版から既に6年が経ちました。
それまで「30枚描けば合格する」と言われ続けてきた試験を、解法という視点で分析した前著は、製図試験業界の地図を塗り替え、エスキースのノウハウ書が書店にも随分並ぶようになりました。
そんな中で様々な事件が起こり、法改正が行われ製図試験の様相にも変化がみられます。
ここ数年、いわゆる難問奇問が出題されなくなり、課題文に書かれている条件をもれなく、バランスよく、冷静沈着に対応できる、安定した基本能力が問われている出題が続いています。
一方ではCAD化の進展という大きな流れの中で、手を動かして考える能力の低下が否めないと思われます。こうした状況に対し、私どもは、難問を分析して解く手法ではなく、基本的な課題をバランスよく確実に解くという方法論を探求してきました。既に延べ利用者が2000名を超える通信添削でのノウハウ、そして講習会や東京での塾における経験などを通じて、成果を着実に積み上げています。
こうした成果をもとに本書では、一級建築士設計製図試験の具体的な解法テクニックとして、「関係図」等を中心とした新しい読解の方法である「条件の整理」という概念と、ただひたすら練ることに重点をおいた従来のプランニングを見直した「捨てプラン」と「クイック・リスタート」というモデルを提案しています。
そして、それらの特徴である課題文の情報を図化しビジュアライズすることをうけて、このエスキース全体を「ビジュアルエスキース」と名付けました。
この製図試験は決して難しい試験ではなく、読み間違いや試験本番での思考ループを回避することができれば合格に手が届く試験です。
しかし、世の中の様々なテキストや講習は、「間違えずに読むこと」や、「順序立てて図化して構築する」といった試験への対応を、基本的であるがゆえに軽視してきたように感じます。
何度も試験を受けている方にとっては、「当たり前のことしか掲載されてないなあ」と思うかもしれません。逆に受験経験のない方は本書を読みすすめると、「あまり深みのない試験だなあ」と思うかもしれません。しかし、製図試験当日の現場で行われている最前線の戦いは、
「当たり前のことを、そつなく確実に間違うことなく行うこと」
なのです。
本書を通じて、合理的なエスキース手法を修得し、合格をより確実なものにしていただけるものと確信しています。
学科製図.com主宰
曽根 徹
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