おわりに
「自然エネルギー業界は、若手の繋がりが弱いように思います。ぜひ同世代の実践者の方たちとのネットワークをつくることができれば思うのですが、いかがでしょうか?」
2013年9月、自然エネルギーを通じた地域自治で有名な長野県飯田市へ視察に訪れた帰りのバスの車内で、本書の監修者である諸富先生に、私が提案した一言。この一言をきっかけに業界若手の実践者の皆さんとの縁を繋ぎ、昨年2014年3月21日に計24名が集い、「若手再エネ実践者研究会」が生まれた。
この本のコーディネーターをさせていただき、この研究会の発起人である私自身も、京都大学大学院の経済学研究科博士課程に在籍しながら、出身地である岐阜県高山市で、自然エネルギー利用日本一を目指す市のビジョンを達成するため日々実践(木質バイオマスや小水力など)に取り組む。未成熟なこの業界をゼロからつくりあげる活動は常に試行錯誤で、思い悩むことも多い。各地にいる若手の実践者が繋がり、情報や行動を持ち寄ることで新しい流れを生み出すことができないかという構想は常々抱いていた。
組織された研究会は、三つのことを目的にしている。
@地域と情報を繋ぐ
A人と知恵を繋ぐ
B政策に繋げる
結成してから1年と少し。現在50名をこえる若手実践者による当研究会は、これらの目的を達成するため、配電網や電力小売りといった旬なテーマの研究会から、五大資源(太陽光、風力、地熱、バイオマス、水力)に関する勉強会、学生との交流シンポジウムなど、自然エネルギーに関するさまざまな取り組みを行ってきた。昨年の夏には、京都大学での集中講義も開催し、産学官連携の研究を実践している。
私自身、理論と実践の両方に身を置く日々の活動を通じて、大学や行政的な見地から、また事業化に関わる実践的な立場双方から触れて感じる自然エネルギーの最大の魅力は、“多様性”である。エネルギーはすべての基礎だと感じている。農業、製造業、流通業、サービス業など、地域のすべての産業に通じている。エネルギーを通じて見える世界はこんなにも広く、関わる人はこれほどにも多様なのだと感じる日々である。研究だけ、実践だけということではなく、その“多様性”にどっぷり向き合い、広い世界の今を捉え続けたいと感じている。どっちも大事で、どっちも欠けてはいけない。そんな思いで実践と理論の間を行き来している。
本書の22人から波及して、そして研究会を通じて、多くの若手が繋がり合い、感化され、互いに行動を繋いでいってほしい。私がそうであったように、一人ひとりの魅力的な実践者に触れ、これから出てくる「若手再エネ実践者」が、自然エネルギーを手段に、さまざまな活力ある場づくり・地域づくりに寄与していくことを切に願っている。
2015年3月 井上博成
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