政策学ブックレット、刊行にあたって




 グローバル化や複雑化が急速に進んでいる現代社会で活躍するためには、状況を的確に把握し、そこにある問題を見つけ出す高い問題発見能力と、その問題を解決するための能力が必要である。そのため、日本人の多くが問題発見能力と問題解決能力をいかに高めるかが大きな社会的課題となっている。そこで、2004年4月に、このような課題に応えるべく同志社大学政策学部が
誕生した。

 政策学部では、問題解決のために採用される人々の知識・情報と活動の体系を「政策」と考え、問題発見からその解決に至るプロセスを「政策過程」として捉えている。そして、この「政策」をキーワードに、これに関連する知識、理論、手法の基礎を体系的に教授するとともに、実践的なトレーニングを展開している。そこでは、即戦力となる「人材」の養成よりも、どのような社会にあっても活躍できる「人物」を養成することを目指している。

 一方で、「政策学」という名を冠するかぎり、政策学を構築したり体系化したりすることも政策学部の大きな課題である。残念ながら、現状ではディシプリンとしての政策学が確立しているわけではない。政策学確立のためには、政策に関わる様々な研究領域が学際的な共同研究を展開しなければならない。幸い、政策学部にはそれに必要な多様な研究者が集まっている。

 このように、政策学部は、問題発見・問題解決の能力が高い人を育てるための教育と、政策学を構築するための研究を展開してきた。政策学部創設10周年を記念して刊行された本ブックレットは、その成果に基づいてまとめられたものである。政策学部の教員が、社会の様々な現象や諸問題を、多角的、多元的に分析し、新しい解決策を模索している。政策学部とそこで展開されてきた教育研究を多くの人々に知っていただくために、一般的なテーマをで
きるだけ分かりやすく論じている。つまり、学術論文集ではなく、社会の様々な人々に読んでもらうことを想定したものである。

 本ブックレットを通じて、社会を把握し分析する新しい視点や方法を見出していただき、同時に同志社大学政策学部の教育研究の趣旨とその特徴を知っていただければ幸甚である。

2014年3月
同志社大学政策学部10周年記念出版編集委員会を代表して
政策学部・総合政策科学研究科教授 真山達志