田舎暮らしやスローライフということが盛んに言われ、都市生活から農山漁村での暮らしに転じる人が増えている。
特にここ数年は、戦後の第一次ベビーブーマー、いわゆる「団塊世代」の人たちの大量退職を見越して、「セカンドライフを自然豊かな田舎でゆったりと」などといった魅惑的なフレーズが、新聞や雑誌などで踊るようにもなった。
「田舎」をテーマにしたテレビ番組も、娯楽系と教養系とを問わず花盛りである。Iターン、Jターン、Uターン、デュアルライフ(二地域居住)など、時代を彩るさまざまなキーワードが飛び交い、最近ではLOHAS(ロハス)なんていう新語ももてはやされている。
日本の農林水産業の危機が叫ばれ、地方の衰退を憂える声が高まり、いろんな人たちが「これはなんとかしなければ」と、全国各地でさまざまなアクションも起こしている。
一体全体、この日本で今、何が起きつつあるのだろうか──。
そんな途方もない大問題に、考えるヒントを与えてくれる人たちがいる。
まだ人の目が都会に向き、人の流れも都市へと向かっていた頃、早くも逆方向に歩き始めた人。バブル真っ盛りの中、人も羨む業界人から早々と田舎へのUターンを敢行した人。都市の表層的な便利さや豊かさに危うさを感じ、自給自足的な生活に挑戦し始めた人。とにかく海が好きだから、大手企業での安定した暮らしをあっさり捨て去った人。そうかと思えば、都会での日常生活の中で、多少でも自然の恵みや土のぬくもりを感じたくて、自分でせっせと野菜を育てたり、荒れた田んぼを再生して米作りに励んだりする人。
思いはいろいろ、いきさつもそれぞれだが、自分の足元を見つめ直し、ほかの誰のものでもない自分の人生を、人よりも少しだけスローなペースで、精一杯極めようとしている“生き方の達人”たち。
これは、そんな素敵な“生き方の達人”を訪ね歩いた、ささやかな「旅」の記録である。
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