新谷洋二先生(東京大学名誉教授)と太田勝敏先生(東京大学名誉教授)のご指導のもと、都市のバス交通の研究をはじめて20年以上の日々が過ぎてきた。原田昇先生(東京大学教授)、久保田尚先生(埼玉大学教授)をはじめ多くの先輩方にご指導をいただき、どうにかこうにか、バスの研究を続けてはいるものの、まだまだ不勉強なことが多い。
秋山哲男先生(首都大学東京教授)のお誘いで、『バスはよみがえる』という本を執筆させていただいたときから数年を経た。そのとき書ききれなかったこと、その後に勉強させていただいたことをもとに、今回、本をまとめるに至ったが、果たして研究成果の集大成には程遠く、まだまだ課題が多いことを実感するのみである。
幸いに、行政職員や市民あるいはバス事業者など多くの人たちの前でバス交通の話をする機会には少なからずめぐまれ、また横浜国立大学での公開講座も継続的に行ってきている。また、雑誌等からの原稿執筆依頼もいくつか受けてきた。本書は、それらの中で、比較的興味をもっていただいた内容をなるべくわかりやすくまとめたつもりであるが、まだまだ足りない部分も多く、読者諸兄からの忌憚のないご意見をいただければ幸いである。
首都大学東京で講演をした際に、同大学の中林一樹教授から、バスのことではあるが、これはまちづくりそのものを語っている、というコメントをいただいた。まさにその通りで、バスという切り口を通して、まちづくりを考えてきたという自負はある。一見個別の細かい論点にみえるところでも、まちづくりにとってはとても大切であり、交通、それも人間の目線で考える交通がいかに大切なのかが、特にまちづくりに関わっている読者に伝わり、その意味するところを理解していただければ、筆者としてはとても喜ばしいことである。一方で、バスを活かさない選択肢もいろいろあり、本書はそれらを否定するものではないことも事実で、本書だけでは十分に伝え切れていないかもしれないが、誤解なく読んでいただければ幸いである。
最後になりますが、お世話になった方々に謝辞を申し上げます。まず、私のこれまでの研究をお導きいただいた、新谷先生、太田先生、そして横浜国立大学での研究および教育活動において多大なご配慮をいただくとともに、交通工学的な視点での多くのアドバイスもいただいた故大蔵泉先生に感謝の意を表します。東京大学工学部都市工学科都市交通研究室出身そして在籍のみなさまにも直接、間接にお世話になりましたことを御礼申し上げます。また、この十余年の快適な職場環境は、横浜国立大学土木工学教室の先生方、職員のみなさんのおかげに他なりません。御礼を申し上げるとともに今後ともよろしくお願いいたします。矢部努氏、竹内龍介氏はじめ交通研究室の卒業生、修了生、そして在学生各位とのコミュニケーションは数多くの刺激を私に与えてくれました。みなさんにも御礼申し上げます。数々の活動の機会を与えていただいた、国土交通省はじめ行政機関各位、そして計画系シンクタンクをはじめとする財団や民間組織のみなさま、土木学会や日本都市計画学会、交通工学研究会をはじめとする学協会の各位にも御礼申し上げます。
そして、時にめげそうになる自分を、かげになりひなたになり支えてくれた友人、知人、そして何よりも愛する家族に、感謝を表して、ここに筆をおきます。
2006年9月吉日 バンコクにて 中村文彦
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