健康を維持するためには、一般家庭を含めて建築物内の環境衛生を良好に保つことが大きな条件の1つとなりますが、とくに多くの人が1日の1/3以上の時間を勉強の場、職場などとして利用する学校、デパートやホテル、事務所などの、いわゆる特定建築物における環境衛生の確保は重要事項であり、この目的のための業務に従事する技術者であるビルメンの職責は重大であります。
アメリカのビル協会(BOMA)の標語に“Properly installed,properly used and wellmaintaind”「適正に設備され、適正に使用され、そして良好に維持されるべきだ」というのがあります。すなわち installing, using, maintaining の3者のうち、ひとつでも欠落すると、健康を害することに至るわけです。using するのは居住者や利用者であり素人ですが、installing を担当するのは建築家や建築設備士とその関係者であり、maintaining に携わるのがビルメンで、この両者は専門家であります。
とくに注目しなければならないのは、近年では、ビル内部の環境衛生状態が悪化し、シックビル病やレジオネラ症などが多発し、近代建築の粋を集めたインテリジェントビルが、不健康なビルの汚名であるシックビル化している点です。この最大の原因は建築物および建築設備のメンテナンス不良であり、いわば密閉された状態のインテリジェントビルにおけるメンテナンス不良は即、シックビル化に至ることであり、このことは換言すればインテリジェントビルとしての正常な機能を確保(良好な環境衛生を維持)するには、つねに質の高い保全・運転管理を実施しなければならないことを意味しているわけです。したがってビルメンの職責は極めて重大であり、かつ、ビルメンの必要性、重要性のニーズは、ますます高まっております。こういった斯界でご活躍の方々、そして参入を希望される方々のために少しでもお役に立てばとの思いを込めて浅学非才の身を顧みず、ビルメンそしてビルメンの最高責任者である建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者)の国家試験や受験や実務に必要不可欠とする用語も含め、ビル管理全般にわたる約2000の用語を厳選し、わかりやすく解説する本用語集を執筆した次第であります。
本書は従来のアイウエオ順に示す辞典類の常識を打破し、特に斯界への参入を希望される多くの方々のために建築物環境衛生管理技術者試験のテキストを兼ねたようにアレンジし、かつ、最終頁の索引により必要とする用語を検索できる用語辞典としても気軽に利用できるように編纂した次第です。したがって本書の内容を80%程度理解して頂ければ建築物環境衛生管理技術者の国家試験に必ず合格できると確信しております。
最後になりましたが、素晴らしいイラストを描いて下さいましたイラストレーターの石田芳子先生のご尽力に対し厚くお礼申しあげます。
1999年10月