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イラストでわかるビル清掃・防鼠防虫の技術




まえがき



 近年における建築物の新設や更新はめざましいものがあり、とくにその高層化が進み、大都市では超高層建築物があいついで建設されるすうせいにあります。そして新設される超高層ビルや中小ビルはもちろんのこと、築後相当経過したビルがモダニゼーションにより近代化される場合も、ハイテクノロジーによる高度の情報化、OA化、コンピュータのビル管理など、いわゆるインテリジェントビルの機能を有しています。
 このようなインテリジェンビルもメンテナンスを怠ると、ビルの機能低下や環境衛生の劣化などの弊害につながり兼ねません。ビルメンテナンスはビルの保存行為を中心とする、ビルの躯体、造作類、設備機械の維持管理作業であり、ビルを快適かつ安全な環境に保つことを目的とするものです。設備機器のオペレーションと保全作業である設備管理、清潔な衛生環境およびビルの美観を保つための作業である清掃管理、防犯、防火上の予防管理作業である保安管理、ビルの躯体、設備の修理、改修業務である保全管理の4つに大別される内容からなりたっているのです。
 本書は、ビルメンテナンスのうち“清掃管理”に関して、初心者の皆様方とご一緒に勉強するために解説したものです。清掃管理というと多くの方々は「単純な清掃作業」と狭義的にお考えのようですが、清掃作業はもちろんのこと、ごみ処理業務や害虫駆除、ねずみの駆除作業、し尿浄化槽の維持管理、消毒・殺菌業務なども含まれるのです。この点は前もってよく認識していただきたいと思います。清掃管理の技術も、ひと昔前と比べて格段の進歩をし、また清掃機械の開発もめざましいものがあります。しかし、対象物が自然発生および人工的発生による、ほこり、よびれ、ごみ(廃棄物)、し尿、そしてゴキブリやカなどの害虫やねずみであるために、いわゆるハイテク技術が駆使しにくい側面があり、手作業に頼らざるを得ない面が多々あります。設備管理や保安管理に比べて、地味なそして“縁の下の力持ち”的な存在となりますが、ビルメンテナンスにおける清掃管理の重要性は格段のものであり、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(ビル管理法と略称)による規制管理基準は、清掃管理業務が中心的存在となっているのです。この点も十分に理解していただきたいと思います。
 いずれにしましても、ビル清掃管理の職場へ容易に参入していただけるよう、イラストやわかりやすい図表などを用いて、清掃管理の技術に関してやさしく解説した本書を執筆した次第です。本書は初心者の方の斯界への誘いのため、そしてすでに斯界でご活躍の方々の知識、技術の向上のため、また建築物環境衛生管理技術者や建築設備検査資格者、浄化槽管理士、廃棄物処理施設技術管理者などの高度の法的資格をめざしていただくための、糧の一助になればとの願いを込めて、浅学非才の身をも顧みず執筆した次第ですが、繁簡当を得ぬところや誤謬があるやも知れませんので、大方のご叱正を賜るとともに、本書が読者各位の斯界における実務そして勉強の一助として、お役に立てばこのうえもない幸甚です。
 そして素晴らしいイラストを描いて下さいました木村芳子先生のご尽力に対し厚く御礼申し上げます。
 1994年3月
中井多喜雄



もくじ
あとがき
著者略歴



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