絵ときブック 構造力学入門


まえがき


構造力学は、構造設計の基礎をなす重要な分野です。しかし、物理学や数学を必要としますので、どうしても苦手という方が多い分野でもあります。そういう私も構造力学を学び始めたころは、理解するのに大変苦労しました。

「力のモーメントの距離はどうなっているのか?……曲げモーメントって、せん断力って何?」

問題を解きながら時間をかけて習得した覚えがあります。当時は

「もっと噛み砕いた構造力学書はないだろうか……」

とよく思ったものでした。そんな思いを具現化すべく、私は2002年に「図説やさしい構造力学(学芸出版社)」を執筆しました。

本書では「図説やさしい構造力学」の内容の一部を講座風に仕立て、さらに詳しく説いてみようと思います。構造力学を理解していただきたいという思いを込めて、私はいつも教壇に立ちます。しかし、教壇に立てる回数には限りがあります。そこで私自身の構造力学講座を本として発信すれば、より多くの方々と接することができると考えたのです。では私の分身を紹介しましょう。

本書は「気付く」「推理する」を考え方の中心においています。割り箸を折る、綱引きやシーソーで遊ぶという身近なことをもとにして、力を掘り下げてみたいと思います。

本書では、曲げモーメント図、せん断力図が描けるようになるまでを取り上げています。この部分は構造力学の初歩であるとともに、多くの方が最もつまずきやすい部分でもあります。手法としては、矢印図法、スパナ化法、面積法に焦点をあてて解説していきます。これらは力を感覚的に理解するための優れたツールです。

「あっ! 曲げモーメントって、せん断力ってそういうものなのか! そんな関係になっていたんだ!」

と感じとっていただければ、うれしい限りです。

他の構造力学書とはアプローチを異にしますので、多くの方々に読んでいただければ幸いです。


では、いっしょに学習していく生徒たちを紹介しましょう。


本書の目標


曲げモーメント、せん断力を理解し、曲げモーメント図、せん断力図を早く正確に描けるようになろう。

本書の流れ

力の基礎

 力の表し方
  ・集中荷重、分布荷重、力のモーメント
  ・力の釣り合い
          ⇒

反力の求め方

 力の釣り合い式
          ⇒

曲げモーメント図の描き方@

 スパナ化法:スパナで曲げモーメントをイメージ化!
          ⇒

せん断力図の描き方

 矢印図法:力の矢印を追ってせん断力図を一筆描き!
          ⇒

曲げモーメント図の描き方A

 面積法:曲げモーメントとせん断力との関係を使おう!

単位について

力の単位はN(ニュートン)、kN(キロニュートン)ですが、本書ではkg(キログラム)を使用しています。kgは質量の単位であり、力の単位ではありませんが、できるだけ力を身近に感じていただけるよう、あえてなじみのあるkgとさせていただきました。

最後になりましたが、本書の作成に尽力いただきました学芸出版社知念靖広様、イラストを担当いただきました野村彰様、この場をもって厚く御礼申し上げます。