経済の発展、国民生活の向上に伴う建設投資は年々増大し、建築技術はより高度化、複雑化し急速な発展を遂げており、こういった斯界の情勢からも、従来、建築関係の技術者としての法的資格は、建築基準法に基づく一級建築士、二級建築士のみでしたが、近年では、木造建築士、建築設備士、更に建設業法に基づく、建築施工管理技士(一級、二級)、土木施工管理技士(一級、二級)、管工事施工管理技士(一級、二級)等、多くの法的資格が誕生して参りました。しかし、やはり建築技術者の根幹をなしているのは建築士であり、建築斯界の社会的責任の中心になって支えているのは、建築士であることは法的にも社会的認知からも疑う余地のない事実であり、建築士がその責任を担うためには豊富で高度の知識が要求され、合格率の厳しい国家試験(学科試験〔建築計画・建築法規・建築構造・建築施工の4科目〕および製図試験)にチャレンジし、合格しなければなりません。
ところが、建築法規の科目で合格にいたる正解ができず不合格になる方が相当おられるのが現実です。この主な理由は建築関連法規が実に約130種類もあり、そのボリュームも膨大で、そのため建築士の国家試験において“法令集”の受験会場への持込み、参照が可能という、他の国家試験では例をみないことが公認されているわけです。
にも係わらず、“不合格”という屈辱を味わわなければならないのはなぜでしょうか。
これは“法令集”では、法令上の各用語、術語、記述文などが法令の第何条に示されているかというのが、極めて把握しにくい、というよりほぼ不可能なのです。
たとえば「沿道地区計画」という法令用語は、建築基準法第2条第27号、第68条の2第2項、第68条の3、第68条の5の2第1項、第2項、第68条の6第3号、都市計画法第12条の4第1項第3号、沿道整備法第9条に示されているわけです。
法令試験に合格するには“法令集”のみではなく、各用語や術語などが法令の第何条に示されているかを見極めることも大きなポイントとなるのです。
こういった見地から、法令各用語(約2650語)などが具体的に第何条で示されているかを把握しやすくするために、本書を編纂した次第であります。
本書が斯界でのご活躍の栄冠を獲得されるステップとなれば編者として望外の喜びとするところであります。
中井多喜雄
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