本書は,マンションの管理についてのノウハウを提供しようとするものです.構成としては,77項目に区分し,見開き左側のページには文章を,右側のページにはその解説となる事項を,できるだけイラストレーションを用いて説明し,理解を深めることができるように配慮してあります.また,関連する資料もできる限り掲げることとしました.
77に及ぶ項目は,次のような4編に区分してみると理解しやすいでしょう.
◆第1編 マンション管理の基本的事項
法律上「マンション」と呼ぶのは、マンションの建替えの円滑化等に関する法律の定義によると,共同住宅のすべてではなく,賃貸住宅を除いたいわゆる分譲型のもので2住戸以上が存在するものと考えてよいようです.もともとは,「建物の区分所有等に関する法律」という一般法が存在しますがこれはマンション以外にも適用され,マンションのみに適用される特別法としては「マンション管理の適正化の推進に関する法律」があります.そこで,この両法の基本的事項を理解することが,マンション管理の第一歩となります.ほかに「建築基準法」も関連して来ます.
◆第2編 マンションの維持管理
マンションで生活するためには,マンションはどのような考え方で設計され,建築されているのかを理解することが大切です.シックハウス対策,省エネルギー,バリアフリー,性能表示等に対する考え方や,電気・ガス・水道・下水道・昇降機等の建築設備の理解は欠かせません.また,経年的な劣化に対して,屋根防水,耐震診断,タイルの剥落等に対する安全診断等を考えなければなりませんし,自動車車庫の付置,集合郵便受箱の設置や,住戸内における愛護動物の飼育に至るまで,幅広い対策が要求されます.
◆第3編 マンションの防犯・防火
マンション生活は本来安全なものですが,最近は外国人窃盗団の暗躍もあり必ずしも玄関の従来の鍵だけでは安心できなくなっていますので,その対策を考えなくてはなりません.もう一つ安全を脅かすものに火災があります.マンションの住戸は,プライバシー上も防火上も独立性が強く,確実に区画されていますが,やはり被害を少なくするための対策が必要です.そこで,マンションの防火上の措置や各種の消防用設備(マンションの特例)について,基本的な事項を説明してあります.
◆第4編 マンションの復旧・建替え
便利なマンション生活も,やがてはマンションの劣化が始まります.そこで定期的な修繕により,絶えずその性能等を維持し,美観等の保持に努めなければなりません.それがマンションの資産価値を保全することになります.しかし,それもやがては限界に達することになります.マンションもその寿命に達すると,建替えという方法でリニューアルを図らなければならなくなります.その場合,どのような方法で建替えを行ったらよいのか,これまでは必ずしも明確ではありませんでした.それに対して明確な指針を与えたのが,平成14年12月に施行された「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」です.この法律では,建替え組合を設立し,権利変換と呼ぶ手法に基づいて建替えを行うこととしています.また,建替えに際して必要な知識や,都市計画に基づく建築基準法上の規制についても説明してあります.
さて,平成10年に実施された住宅・土地統計調査によると,共同住宅の戸数は1,660万戸に達しています.これは全住戸約4400万戸の37.8%に達しています.居住人口は5000万人にも達するものと推測されます.マンション管理とは,単に管理組合の役員や管理業者委せの問題ではありません.マンション生活を楽しいものとするには,そのルールを充分に理解することが大切です.従って,マンションに住む人,一人ひとりが管理について強い関心を持っていただきたいのです.
これからもマンションの建設は更に進むことでしょう.現在,マンションに住んでいる人達だけではなく,これからマンションに住もうとしている人を含め,本書が役立つことを望んでいます.
平成15年8月
高木任之
本書は平成15年6月1日現在の法令に準拠しています.従って,同日施行の「建物の区分所有等に関する法律及びマンションの建替えの円滑化等に関する法律の一部を改正する法律(平成14年法律第140号)」の内容に従ったものとなっています.なお,建築基準法上のシックハウス対策(同7月1日施行)も施行後の内容に従って執筆されています.
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