初歩からの建築製図


はじめに


建築設計を行うには、まず、製図板の前を離れ、自らの求める空間や建築の造形について十分にイメージしてみることが大切です。また、こうしたイメージをスケッチしてみたり、あるいはスタディ模型を作ってみたりするのもよいでしょう。建築は、このような試行錯誤を経てはじめて創出されるのであり、建築設計の苦楽は、まさにここにあると言って過言ではありません、しかし、このようにして創出された建築のイメージは、当然のことならが、このままでは建築にはなり得ません。こうしたイメージを具体的な建築として形に表し、他者に対して伝達するための手段が必要です。そこで「図面」が、最も主要な手段として必要になるのです。

本書は、例えば大学の建築・住居系学部・学科における1〜3年生を対象として、こうした建築設計の初学者が製図を学ぶ際に、図面の書き方や見方を容易に理解し、そして習得できるようにまとめたものです。特にこれまでの製図の教科書には無い試みとして、イラストを各所に用い、重要な点や留意すべき点を示しています。これによって、初学者がつまずきやすいポイントを易しく解説し、また、見過ごしてしまいがちなことに気付けるような工夫をしました。

巻末には建築設計の演習であがる「よくある質問」を取り上げ、これらに回答をしました。ここで取り上げた「よくある質問」は、初学者からのものはもちろん、次のステップに進んだ時にあがる質問や、プレゼンテーション時の留意事項、さらには日々の設計演習時における悩みなどにも及んでいます。また、こうした質問に対する回答は、できるだけ本文にリンクさせ、事例を参照しながら理解できるようにしました。したがって、既述したように本書は製図の入門時のみならず、学生諸君それぞれが建築設計を学ぶ多くの期間を通して使用することができるでしょう。
 そして本書が必要でなくなった時、それは建築設計の基礎を習得したことを示しています。その日が来るまで、本書が学生諸君の一助となれば幸いです。

本書をまとめるにあたり学芸出版社の知念靖廣氏には、本書の企画段階から継続的に、ご助言とご尽力を頂きました。ここに心からお礼を申し上げます。

編者 藤木庸介