6 住宅金融公庫の新たな制度
菅沼康雄(住宅金融公庫)
歴史文化継承住宅
最近、公庫の融資制度の内容は従来のものと比べると、だいぶ様変りしたといわれています。公庫融資制度は従来から良質ストックの形成ということで、住宅の性能、例えばバリアフリーの住宅を造りましょうとか、断熱構造化住宅を造りましょうとか、住宅単体の質に着目して質誘導を行ってきたところです。
一方で最近は特に住宅とその環境、周りの住環境を含めた面的なところに着目して融資していこうということで制度を作っているところです。その一つのメニューとして歴史文化継承住宅融資制度があります。これについて説明します。長年にわたって維持されてきた伝統的な街並みを、将来にも国民共通の歴史的・文化的資産として保護・継承しようとする動きが全国各地で高まってきており、地方公共団体がそれを熱心に取り組んでいるところです。街並み等保存・継承すべき地域の住宅に対して、街並み条例、要綱等によって当該地域に固有の建築様式、例えば外壁は格子戸をつけるとか、壁は漆喰にするとか、仕様、構法などについて街並み景観に調和するような一定の基準を設けているところがあります。そこで、公庫でもこのような公共団体が制定した条例等に基づいて、新築やリフォームされる場合については優遇を図っていこうということで、今年の4月から創設された制度です。
具体的に内容を申し上げますと、増改築のリフォームについては、融資限度額が1千万円まで枠が広がっています。修繕工事の場合は5百万円です。新築住宅については、基本融資額の実質融資率を80%に引き上げています。
実際の工事費が例えば3千万円かかる場合はその実工事費の8割の2千4百万円の融資の枠が設定されます。しかし、本制度を適応するためには、公庫支店と街並み条例等を制定している地方公共団体の間で、条例等に示されている仕様などについて協議し、本制度の要件を決定する必要があります。
民家再生
伝統構法の木造住宅の再生について調べてみました。民家を解体し、梁などの構造材等に分解してしまう場合は、それを別の敷地に完全に移築する工事、または部分的に使える部材のみを使用するケース、そして既存住宅があるその敷地で分解した部材等を使って民家再生を行うケースがあります。最後のケースが最も多いケースのようです。梁などの部材についていえば、劣化がひどいものについては取り替えを行い、新築と同様な工事を行うということになると思います。この場合、建築基準法、それから公庫融資においても新築として融資が行われますので、新築の一般的な工事と考えていただければいいと思います。
しかし、このような民家再生工事の中には、敷地ですとか工事費の制約から、柱、梁の軸組みを残したまま基礎の打ち替え、屋根の葺き替え等を行って新築並の工事費がかかるというケースがあります。この場合は修繕工事とみなされ、公庫のリフォームローンを使うことができます。基礎の打ち直しを行う場合は、耐久性向上工事の分類に入ります。すると5百万円の融資になります。
したがいまして、公庫としてはこのような大規模な修繕工事で非常に工事費がかさむ民家再生工事については、その促進が促せるように優遇策を検討していかなければならないと思います。
最後になりますが、住まいは地域を豊かにする基本的な要素であると思いますし、住まいと環境は地域の人々の生活を魅力あるものにしていくという役割を果たすと思います。今後も重要なキーワードになると思います。公庫としましても公共団体との連携を一層強化するとともに、今回のようなケースをお借りして情報提供などの積極的な取り組みを図っていきたいと思っています。これからもよろしくお願いします。
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