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ひとつ石・定例会報告
『町家再生』の京町家に確認はおりるかの巻 (2002.6.7)
 報告・知念靖広


 『町家再生の技と知恵』の第2章「京町家のできるまで」のなかで取り上げたプロトタイプ町家が、果たして現行法規ではどのように位置づけられるのだろうかということを、薗部肖子さん(京都府田辺土木事務所)にご発表いただきました。廣誠院という、都会の真ん中にある、美しい庭園とすてきな数寄屋建築にて定例会を行いました。
 京町家の図面、都市計画の用途地域地図、法令集、壁量計算表などの資料を駆使し、かなり本格的に「京町家」の適法性・違法性をご指摘いただきました。普段まちなかでなにげなく目にする木造伝統工法の建築ですが、こんなに法律・規準でがんじがらめにされているとは思いもよりませんでした。一度取り壊してしまったらもう二度と同じやり方では建てられないというところに京町家の存在のあやうさが感じられます。
 
 伝統工法の基礎は、ひとつ石と呼ばれる礎石の上に、柱を載せているだけのものです。アンカーボルトなんかで緊結しようという意志はまったくどこにもありません。固めて強くではなく、ゆるやかにつなげて柔軟に、という印象です。在来軸組の工法のように、筋交い、耐力壁、金物・ボルトでガチガチに固めるのではなく、仕口・継手をしっかり締めて、あとはゆるやかに力を地面に放つといったところでしょうか。はんなりとした京の町家の思想がここにあらわれてきているようです。