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景観ガイドライン

1。景観ガイドラインとは

 景観ガイドラインとは、良好な都市景観の形成を目的として、建築物などの形態や色彩などを規制、誘導するための指針を言い、景観形成指針とも言われている。

 作成方法は自治体によって異なり、景観マスタープランの中に組み込まれているものや、独自にパンフレット的に作成されているものもある。

 景観形成のために、建物の高さや屋根の形状の形態的な指針を示すなどのように、景観形成の際の具体的な指針となっている。

2。景観ガイドラインの作成方法

 景観ガイドラインの作成方法をみると、町や村などのような自治会や、住宅地や商業地のように用途による地区別の作成方法、あるいは通り別などのように、特性のある場所毎に分けて作成している例が多い。

 またそれに加えて、公共施設から積極的に景観形成を推進するために、「公共施設(事業)等景観形成ガイドライン」を作成する方法や、一定規模以上の大規模な開発行為に対して「大規模行為景観形成ガイドライン」を作成している例が多い。

 また最近では大阪市で作成した「建築美観誘導制度及び総合設計(公開空地)ガイドライン」のように公開空地に焦点をあてたガイドラインも作成されている。

 豊島区では、主に公共事業を対象としたプロジェクト進行ガイドラインを作成し、企画段階からの検討が行われるようにしている。プロセスに着目したガイドラインと言えよう。

3。景観ガイドラインの対象

 景観ガイドラインの対象とするものは、建築物や橋梁などの施設、土地の区画形質の変更に関するもの、看板、ストリートファニチャー、植栽、舗装などである。

 施設の場合、道路、橋梁、河川、公共建築物、公園・緑地、ダム、治山・砂防施設、駐車場、供給処理施設等が対象となる。

 土地の区画形質の変更に関するものとしては、土地の造成、緑の保全と緑化、法面・擁壁などがある。

 その他、煙突や高架水槽等の工作物に関するものや、護岸、舗装、防護柵、標識・サイン等、照明施設、ベンチやゴミ箱などのストリートファニチャー等に関するものもある。

 また道路占有物や工事中の景観に関するものも作成している例もある。

4。景観ガイドラインの内容

 例えば公共建築物については、建設省の「官公庁施設のうるおいある外部環境設計指針」には、公共建築物の景観形成において配慮する内容が、「地域性」「公共性」及び「快適性」に分けられ示されている。

 具体的には、「位置」として背景となる自然景観を壊さない場所や壁面の位置等、「形態」として高さ、階数、屋根の形等、「意匠」として周辺との調和、屋根、壁面、開口部、正面性等、「色彩」として周辺との調和、地区毎の基調色等、「素材」として地域性のある素材、耐久性・維持管理に優れた素材等を内容とし、写真などの例により誘導するものが多い。また加えて、「緑化」、車庫や倉庫等の「付属施設」、「門・塀等」を内容とするものが多い。

 景観ガイドラインのタイプは地区の特性により規制型、推奨型、誘導型に分けられ、表現内容も異なる。地区が保存地区のように保存型の場合は規制型のガイドラインとなり、歴史的景観形成地区のように継承型の場合は推奨型のガイドラインとなり、一般的景観形成地区のように調和型の場合は誘導型ガイドラインとなる(表28・1)。

5。真鶴町の「美の基準」

 規制型や推奨型のガイドラインが多いなかで、真鶴町の「美の基準」は、緩やかで、基本的考えを伝えるもので、それを理解した設計者の創造性に委ねることを意図し作成されている。

 従って細部まで決めているようなものではなく、キーワードや前提条件、解説やスケッチの全編が詩的に表現されたものである(図28・1)。

 そのため設計者は「美の基準」を理解し、あとは自らの判断によりデザインすることになる。そのような意味で、創造型のガイドラインと言える。

6。公開空地のガイドライン

 大阪市では、市の中心部に総合設計制度が多く、景観形成上重要となり、'95年6月「総合設計制度による公開空地整備ガイドライン」として公開空地に対してガイドラインを策定した。

 総合設計では、公開空地を設ける場合に容積率制限や高さ制限が緩和されるが、この公開空地の連続的形成による安全で快適な歩行者空間の確保と、個性ある町並みの整備の推進を目的に都心部の一定地区を対象に策定した。

 対象地区では、13の街路を対象として、@街路毎の公開空地の整備方針、A公開空地の位置及び形状、B公開空地の植栽及びストリートファニチャーなどの仕様、C公開空地に面する建物低層部の用途などについてガイドラインを定め誘導している(表28・2)。

7。景観ガイドラインとまちづくり

 景観ガイドラインの作成がある一定の段階に達したとはいえ、ブームに乗り遅れまいとして作成した自治体も多く、まだまだ地域の個性を重視した景観ガイドラインにはなり得ていないものも多く見られる。

 今後、地域の個性を重視した景観ガイドラインの作成、充実がより一層求められよう。そのためには、作成プロセスでも行政主導型から住民参加型での作成への対応が求められ、そのためにも、住民に分かりやすいガイドラインが求められよう。

 更には、設計者の創造性に配慮したガイドラインが求められる。

  1. 建設省『官公庁施設のうるおいある外部環境設計指針』
  2. 真鶴町『真鶴町まちづくり条例・美の基準・デザインコード』'92
  3. 大阪市『総合設計制度による公開空地整備ガイドライン』'95
  4. 豊島区『豊島区アメニティ形成ガイドライン』'93
  5. 建設省住宅局建築指導課・市街地建築課監修『建築・まちなみ景観の創造』技報堂出版、'94
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