成熟のための都市再生


書 評
『地域開発』((財)日本地域開発センター)2004. 7
  日本では、一億総不動産屋と化したバブル期の後、長期な経済停滞に見舞われ、そこから抜け出す道筋がまだ見えているとは言えない。しかもいよいよ人口減少、高齢化が深刻な時代を迎える。その状況下で都市再生政策は一つの切り札として積極的に取り組まれているとは言え、事態を打開する対応策になっているとは言えない。
  本書は二部構成で、第一部において、都市再生とは、21世紀の日本が人口減少、高齢化に向かう中で、現在の日本の貧しい生活環境と無秩序な生活空間を再編成し、質の高い豊かな空間を築くためには、高い志を持って長期的に取り組むべき課題であろうという主張を展開している。第二部においては、その主張に基づいた街づくりに関する実践的な問題を解決するための方向性について言及している。
  これからの成熟時代に向けて国土計画、地域計画、都市計画をたてる上でも、また、建築基準を再編成する際に考えるべき根本的な課題も示されており、街づくりにかかわる人々に示唆に富んだ一書といえる。

『新建築』((株)新建築社) 2003. 7
 都市再生政策が声高に謳われる中、サスティナブル・官民提携型開発・市民参加など都市論にも流行言葉があるものの、それらの言葉は実態に促して語られていないことを筆者は指摘する。海外の都市計画、旧建設省や茨城県での都市計画・住宅政策など日本の近代都市をリードしてきた筆者は、成長の時代を終え成熟へと向かう都市への提案を本書で行っている。人口問題、社会・産業構造の変化に伴う法律や政策転換など根本的な課題と共に「未来に向かって企てる意志」の必要性を説いている。
(A)