『地域開発』((財)日本地域開発センター) 2004. 4
温暖化等の地球環境問題が深刻化する中で、自然エネルギーが注目を集めている。自然エネルギーは化石燃料のように枯渇することはなく、原子力のように事故を引き起こす危険性も少ない、極めて優れたエネルギー資源である。加えて自然エネルギーの普及に取り組むことは、風や水・森林といった地域の自然を見つめ直し、地域の活気を取り戻すことにもつながる。だが現在の日本では経済・社会的な制約のために、豊富な自然エネルギーを十分に活用できていない。
本書は、20年以上にわたって風力発電に取り組んできた立川町や、昭和30年代の小水力発電の復興をめざす中国地方、地熱利用を進める岩手県など、20の地域の自然エネルギー利用や省エネルギーに向けた取り組みを紹介している書である。きれいな水や空気といった地域固有の自然を楽しみながら豊かな生活を営むことを可能にする、自然エネルギーがもつ魅力を感じさせてくれる一冊である。
『省エネルギー』((財)省エネルギーセンター) 2003. 7
日本の各地では、従来の化石燃料から地域で手に入る再生可能なエネルギーへの燃料転換が静かに進行している。本書は地域で自然エネルギーの普及に取り組む人々の活動を取り巻くエピソードを取材してきた佐藤氏の仕事を再編集し、自然の恵みを地域づくりに生かした数々の事例を紹介したもの。
一例を挙げると、長年の悪風被害に悩まされていた山形県立川町では、強風を逆手に町おこしに生かそうと20年以上にわたって風力発電に取り組んだ結果、10基の風車が設置された。これらの年間発電量は町内の全電力消費量の42.6%を占めるという。豪雪地帯において雪氷エネルギーの可能性が見直され、農産物の貯蔵や冷房のために雪を利用する施設が次々と建てられているのも、自然による災禍をエネルギーに転じた事例の一つである。
このほか本書では、バイオマス・小水力・太陽光・地熱などの潜在力を掘り起こそうとする自治体・NPO・起業の取り組みが網羅されている。省エネルギーについては、“いちばんクリーンなエネルギー”と位置づけられ、1%節電運動で知られる埼玉県川越市と、市庁舎にESCO事業を導入した東京都三鷹市の取り組みが紹介されている。
著者は、ネパール滞在中に大型ダム建設の代案として現地NGOが提示した小水力発電の可能性に着目し、自然エネルギーの取材を始めたという。その集大成である本書には、エネルギー問題をめぐり、地域の人々の心に創造力と自発性が芽生え、やがて結実していくプロセスが丹念に描かれている。
『Argus-eye』((社)日本建築士事務所協会連合会) 2003. 7
主に環境問題や開発途上国の問題を取材し『もったいない』『被災地の人々―ネパール 1993年7月水害被害者の証言』などの著作がある著者が風力、雪、バイオマス、小水力、太陽光、地熱など、自然の恵みにいち早く着目し活用してきた自治体・NPO・企業の取り組みを取材しまとめた本。新しい産業、雇用の創出、環境の保全、地方自治推進などの多様な価値を生みだし、地域を大きく変えている全国の25の事例を紹介、自然エネルギーが満ち満ちているわが国で「豊か」に暮らす姿を伝える。