人と街を大切にする

ドイツのまちづくり

書評


『建築文化』 00.04

 壁の崩壊から10年、ドイツは不況に喘ぎながらも着実に変化への道を歩んでいる。ただし、建設行為に厳しい規制を敷いているこの国では、都市の変革にあたって慎重なプロセスが欠かせない。
 本書は、ドイツで長年都市計画に携わってきた著者が、具体的な事例と平易な言葉を用いて、現代ドイツのまちづくり手法とその成果を解説したものだ。  取り上げられているケースは、都心再生、博物館の建設、あるいは河岸整備などから、低予算の国際建設展や首都移転にまで及ぶ。
 中でも注目に値するのが、自転車重視の都市政策、段階的にマイカーを放棄した団地、拡幅に代わる道路再整備など、車を中心に置こうとしない意欲的な試みの数々だろう。  また、ウルムにおける現代建築を巡る景観問題や都心道路の縮小計画(差し戻し建設)も、住民参加の将来を考える上で興味深い。
 本書を読めば、単に厳格なだけではない、ドイツのまちづくりの多様な実態が見えてくる。
(SH)  


学芸出版社
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