理工系学生のためのキャリアデザイン


まえがき

 大学におけるキャリア教育において、学生が卒業または修了して社会に出てキャリアを形成していくうえで、学生時代に計画的に準備しておく必要性に気づき自主的な実践につなぐ仕掛けが大切であると考えられます。キャリア教育に関する書籍としては、文系の学生を対象としたものが多く、理工系学生を対象としたものは比較的少ないのが実情です。そのなかで、日本の理工系学生の就職の実態を意識したものや、卒業後、技術者として社会で必要とされる要件などを含む、理工系学生特有の状況に着目したものが必要であると考えます。そこで、本書では、大学生としての日々の心構えのほかに、技術を学ぶ学生として社会に出るまでに大学生活で身につけなければならないこと等を、学生自身に考えてもらう機会を提供するように工夫しています。キャリア教育を通して、自分の目標を設定し、それに近づくような充実した学生生活を送ることを期待しています。
 大阪工業大学では、文部科学省の就業力育成プログラムに対応して、キャリアデザイン教室を組織し、工学部の学生を対象としたキャリア教育を実施してきました。キャリアデザイン教室の教員は、理工系の学部学科の出身者で、長年企業で活躍してきた人々で構成しています。特に、工学部の学生の就職先は学科が違えば業界、職種が違うので、多岐にわたる分野をカバーできるような構成です。本書は、講義の教材プリントに検討を重ねてきた内容を主体とし、学生自身がキャリアデザインを考えるために必要な情報や基本項目を提供しています。実際の講義のときには、担当者で学科の学生の進路を想定したようなテーマを与え議論しています。読者には、本書の基本項目の情報をヒントとして、さらに自身で調べ、考えることが重要となります。

 最後に、本書を刊行するに当たり、さまざまな角度から貴重なご意見をいただきました独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の奥 博史氏に、紙面を借りてお礼を申し上げます。

大阪工業大学名誉教授 北條 勝彦