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新版コンクリート工事のチェックポイント100




まえがき



 昭和30年代の中頃までは、コンクリートはほとんど各工事現場で製造されており、コンクリート工事の担当者は使用材料の選定から始まり、調合設計・製造・施工にいたる一連の作業を自ら計画し、実施しなければならなかった。そのため、コンクリートに対する知識の習得は不可欠なものであった。その頃はまだ良質な骨材の入手は比較的容易であったが、セメントのコストが割高であったので、いかに少ないセメント量で所要のワーカビリティーや強度を持ったコンクリートを作れるかということが、コンクリート技術者の腕の見せどころとなっていた。
 ところが、生コン工場が全国的に普及するにつれて、コンクリートに関することは次第に生コンメーカーまかせとなり、現場技術者のコンクリートに対する知識が低下してきた。その結果、コンクリート構造体になんらかの欠陥が生じたとき、その原因が何によるのかという判断もできないという技術者が多くなった。
 原則論でいうと、JIS工場の生コンを使用すれば品質は良好であり、抜取検査で確認できるはずであるが、現実には品質のばらつきが大きく、常に良好なものが得られるとは限らない。さらに、ブリージングや乾燥収縮など、規格にない品質項目については明確にされていない。そこで、使用材料の品質、配合割合、品質管理状況などから、コンクリートの品質を総合的に判断できる能力が購入者にも望まれているわけである。
 一方、生コンの品質は工事現場の施工(運搬・打込み・締固め・養生など)の良否によって大きく左右され、施工が悪いと本来保有する品質が発揮されずに欠陥構造物となってしまう。このことをよく理解せず、欠陥の原因をすべて生コンメーカーに押しつける現場技術者が多いことも問題である。
 これらの点を考慮して、本書では使用材料の選定から施工欠陥の補修まで、コンクリート工事に必要な一連の基本的事項を日本建築学会の鉄筋コンクリート標準仕様書(JASS5)に準じて記述することにした。工事現場の技術者がこれらの知識を身につけ、優れたコンクリート構造体を作っていただくことを期待する。
  平成元年5月
加賀秀治

[改定に際して]

 本書は生コンのJIS(A5308)の改正に合わせ、平成7年に一部改正を行ったが、その後平成9年度には日本建築学会標準仕様書(JASS5・鉄筋コンクリート工事)の大改正が行われたこと、それに伴って指針類が新しくされたこと、生コンのJISや各種建築材料のJISが改正されたこと、SI単位に移行したことなどにより、コンクリート工事の環境も大きく変化した。
 そこで、今回これらの改正点を取り入れ、不適正な箇所をなくすために本書の大幅な改定を行い〈新版〉とすることにした。
  平成12年1月

[注]SI単位による強度の換算

1kgf=9.807N、1kgf/cm2=0.09807N/mm2


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