現場で学ぶ 住まいの雨仕舞い


書 評
『防水ジャーナル』((有)新樹社)2006.8
 建築主の信頼を最も失うトラブルは、雨漏りである。住宅に関する係争は医療訴訟に次いで多くなっており、その中でも漏水関連の事例が多い。雨漏り箇所の特定は難しく、また完全な手直しも難しい。本書では、ベテラン技術者が木造住宅の豊富なトラブル事例をもとに、雨漏れのしにくいデザイン、危険部位における雨の浸入対策など、雨漏りしない家づくりのノウハウを公開。まず設計段階から雨の漏れない家を考えることを基本とし、危険性の高い場所が含まれる場合の対処法が分かりやすく述べられている。

『建築士』((社)日本建築士会連合会)2006.12
 およそ、住まいの設計や施工で、「雨漏り」の現場経験のない人はほとんどいないのではないだろうか。この問題は縄文の時代から今にも続く大命題(チョット大袈裟?)だ。先ずは、漏っちゃあしょうがないのだ。
 先輩達は、この対策にいろいろ手を尽くしノウハウを伝えてきたが、材料や技術が進歩した反面、単純なことが忘れられた。雨がかりの防水は『シーリングだけ』というディテールがその証拠である。
 この本は、水は上から下に流れるという、とてもプリミティブなことを再々強調してやまない。そして毛細血管現象との二つの大きな特性を踏まえ、どうしたら雨漏り被害のない家になるか懇切丁寧に、現場例や図解も交えながら教えてくれる。
 その中で「ハッ」とする部分がある。それは、外壁や屋根の表面材を第1次防水とすると、その下地のフェルトやルーフィングが、第2次防水としてかなり重要な役目を果たしているということである。これにはベテラン諸氏でも『目から鱗』ではないだろうか。
 一般にこれら下地貼り工事の精査はしていないのが現実である。ましてサッシ周りや、換気扇周りのシートの貼り方や欠損の手当てなどにはほとんど無頓着だったような気がする。
 あるいは重ね代が逆さまになっていても、何となく見過ごしてはいなかっただろうか。
 筆者の玉水新吾氏は、職人ではない。住宅会社での技術一筋の人である。しかし現場と理論を一如に洞察し体系的にまとめ『古くて新しい問題』を諄諄と解き明かしている。ベテラン、駆け出しを問わず、ぜひとも読んで頂きたい指南書である。
(勝部民男)