建築法規
〈わかる建築学〉8

まえがき

 私達の日常生活は,様々な法令によって定められたルールによって成り立っています.建築物も,建築基準法をはじめとする様々な建築関連法規に基づいて成り立っています.もちろん,これらの法令に抵触する事があってはならない事は言うまでもありません.
 建築士法では建築士の職責として,「常に品位を保持し,業務に関する法令及び実務に精通して,建築物の質の向上に寄与するように,公正かつ誠実にその業務を行わなければならない」と謳われています.また,建築士に対する定期講習でも,その時間の大半を「建築物の建築に関する法令に関する科目」として建築基準法,その他関係法令の改正内容等について講習を受けなければなりません.これらの事からも,法令を理解し遵守する事がいかに重要であるか,ご理解いただけると思います.
 法令を理解する為には,「なぜそんな法令があるのか」という法令の趣旨を理解する事が大切です.建築関連法規の初学者である読者の方々にとってまず必要な事は,建築基準法に精通する事です.建築基準法の内容を理解し,その意図する事を的確に理解するためには,法令の原文を読みながら理解していく必要があります.しかし,法文は小説などを読むのとは異なり,なかなか理解し難いものです.その理解を手助けするために,本書を活用していただければ幸いです.
 本書は執筆した時点の法令の内容について解説していますが,建築基準法は昭和25年に制定されて以来,技術の進歩や時代時代の社会情勢の変化,災害等から得た教訓などによって法律を見直し,規制を強化したり緩和したりする事でその時代にふさわしいものに改正されています.読者の方々が本書を手に取る時期によっては,その後の法改正によって本書の内容とは異なる内容で規制している場合もあるかもしれません.執筆者達自身は,法令は常に見直されているといった認識を持ち,最新版の法令集と最新の法規制内容を把握するための情報収集に努めています.本書の読者の方々も,本書を身近に置きながら建築関連法規を修得していただき,法規を味方にした建築の明るい未来を担っていただければ幸いです.
 末筆ながら,本書に先行する研究,書物から様々な事柄について多くを参考にさせていただいたことについて,ここに深謝の意を表します.
執筆者一同