建築材料
〈わかる建築学6〉

まえがき

 本書は,「わかる建築学シリーズ」の建築材料編として企画されたものであり,建築初学者を対象にしている.初学者が戸惑うことのないように,基本的科目を平易にだれもが理解しやすいような内容や表現にし,解説が必要と思われる項目については,コラムをつけ,折にふれて基本の再認識がしやすい構成としている.
 建築材料は,建築物を構築するための構成材料であり,人類の生活と密接に結びついている.そのため,昔は石や木などの天然材料が主に使用されてきたが,文化や産業などの発展とともに,特に,明治時代以降は産業革命などの影響を受け人々の要求性能が多様化し,従来の材料に加えて,様々な新しい機能をもった人工材料が開発され使用されるようになった.新しい建築材料の出現は,新しい意匠や構造を生み,また逆に新しい意匠や構造は,材料の改良や進歩を促してきた.このようにして建築は日進月歩の発展を続けている.建築の実務に従事されている方々や初学者の方々は,自分の専門分野を問わず建築材料に関して一般常識を養い自由に材料を使いこなす知識を習得すれば,新しい建築の出現も可能だと確信する.
 また,最近の建築は,耐震性,耐久性や耐火性などの品質をどのように確保するか? どのように長寿命化をはかるか? 地球環境に対する影響をどのように軽減するか? など様々な角度からの検討が必要になっている.建築材料を選定する場合には,施主や構造・意匠技術者とも密接に連携し物理的な性能や美観だけでなく,耐久性や環境性などについても十分に吟味する必要がある.
 これら多くの建築材料を使いこなすには,それぞれの材料特性を把握する必要があるが,すべての材料について専門的な知識をもつことは難しいので,これらの材料のもつ基本的特性をよく把握して使い方を間違わないようにすることが重要である.
 建築材料の変遷には目まぐるしいものがあるので,常にその状況を把握して最適な建築材料を使い分ける知識・能力をもってほしいと切望するものである.
 本書は,多岐にわたる建築材料を,初学者にも簡単に理解してもらうことを念頭に,図表などを用いて簡潔に説明している.また,本書の構成は,一章ずつ勉強して15回で終了する15章だてとしている.各章を地道に勉強すれば一級建築士試験に必要な基礎知識が得られるようになっているので,是非本書を活用して得意科目にされることを期待している.
 各章の末尾と15章には理解度を高めるための練習問題,演習問題を設けているので,有効に活用していただければ幸いである.
 末筆ながら,本書に先行する研究,書物から様々な事柄について多くを参考にさせていただいたことについて,深謝の意を表する次第である.
執筆者一同