一級建築士試験 環境工学のツボ


まえがき

 一級建築士試験は、2009年より新制度に移行し、従来の4学科から5学科に再編成された。これにともない、従来学科Tの分野であった環境工学と建築設備が、学科U(環境・設備)として独立した。この部分の再編は、地球環境の保全の重要性がますます高まる中、社会構造を循環型に転換するうえで、「地球環境建築」や「サステイナブル建築」が、建築生産のすべての分野で不可欠の思潮になったことの反映であろう。
 ところで、旧学科Tにおいて25問のうち各7問程度の出題であった両分野は、新しい学科Uにおいて各10問程度の出題となった。こうした変更により、学科試験全体に占める環境・設備の割合が若干増えることとなったが、環境工学または設備が苦手な人にとっては、より重大な問題が浮上した。
 各学科においては、平均点よりやや低いところに合格のための最低基準が設定されている。たとえ環境工学の分野が苦手であっても、旧学科Tでは3分の1を占めているにすぎなかったので、計画と設備である程度カバーすることが可能であった。しかし、新学科Uでは、たとえ設備が得意であっても、環境工学の点数が悪いと、この学科の合格最低基準をクリアできない可能性が高まることになる。ましてやここ数年、設備の問題が難化傾向にあるので、むしろ環境工学で十分な点数を得なければならない。環境工学は、内容を理解しさえすれば、8〜9割以上取れる分野である。単に過去問題の繰り返し学習で過去問正答率を上げるだけでなく、内容の理解に重点を置いて学習を進めていただきたい。
 本書の特徴は、「必ず覚える!公式」を示し、学習の重点を明確にしていることである。計算に使用するために数式自体を覚えなければならないものと、式の内容を理解すれば文章四択問題に対応できることなどをその都度明記しているので、それを参考にして効率よく学んでほしい。また、本文を補完する内容は、「コラム」として示している。本文理解に不可欠のもの、内容が高度で出題頻度が低いもの、余力があれば身につけておきたいものなど、コラムについても学び方をその都度示している。「問題例」 は、過去の出題をふまえ、テーマに沿って効率よく学習できるよう、重複をできるだけ避けて選択肢を再構成した。このように、「ツボ」を押さえた学習によって、効率よく、効果的な学習を進めていけるものと確信している。
 最後に、本書を手にされたすべての皆さんが、環境工学の分野を十分にマスターされ、一級建築士試験の合格を勝ち取られますよう、健闘をお祈りします。
  2011年2月
大西正宜