ワールド・カフェから始める地域コミュニティづくり
実践ガイド

はじめに


 まちづくりや地域活性化だけでなく、災害や介護、医療に、地域ぐるみで取り組むことが求められている現在、地域コミュニティの必要性が日本中から聞こえています。一方、オープンイノベーションなど、一企業組織を超えたテーマ型のコミュニティも最近はかなりつくられるようになってきました。
 しかしながら、所属を超えてのコミュニティづくりは、内に閉じがちな組織文化を持つ多くの日本の組織において簡単なことではありません。創造性に富んだ会話ができる場とプロセスから新たなチームやコミュニティが生まれてくるワールド・カフェは、ビジネスだけでなく地域づくりにおいても数多く用いられてきています。
 ワールド・カフェで話し合うことで、参加者全員がお互いの思いを伝え合い、ビジョンをイメージとして感じとることにより、参加者が協働へ踏み出す勢いやリズム、一体感が生まれてきます。ワールド・カフェは地域コミュニティづくりの起点、あるいは孵化器になります。
 今、地域では、希薄になっている地縁コミュニティに変わり、取り組みたい課題をテーマにし、外部の方も入りやすいオープンなコミュニティが求められています。そのようなコミュニティをいかに形成するか、価値を生む創造的な活動をいかに継続的に実行していくかが重要です。
 地域コミュニティづくりの主役は、あくまでも地域の住民と、その地域の組織で働いている人々(その地域に居住していない人も含まれる)であるということを著者たちは強く主張したいと思います。もちろん、外部の専門家などに助言を求めたりすることはありますし、その地域に深い愛着を持ち貢献意欲溢れる外部の方々の協力も大きな力になります。
 コミュニティに参加する人の当事者意識と実践こそ、地域に活力を与え、課題を解決し、未来を切り開いていく源であるということを忘れてはなりません。補助金の消化として、その場限りのやっつけイベントを高額の外部ファシリテーターを雇って行うことが地方創生につながるとは到底思えません。
 本書では、これまで2千人近いワールド・カフェの進行役(カフェ・ホスト)を養成してきた著者たちが21世紀型と呼ぶ新しいコミュニティについての概要、地域コミュニティづくりにワールド・カフェを取り入れる際のポイントと、コミュニティづくりのプロセスについて、事例も交えて解説します。
 地域コミュニティをつくることに思いをはせる読者の方々が、地域の方々に呼びかけてカフェ・ホストとなってワールド・カフェを開催しコミュニティづくりへの第一歩を踏み出していくことを心から願っております。