まちづくりの仕事ガイドブック

まちの未来をつくる63の働き方

あとがき
 『まちづくりの仕事ガイドブック』いかがだったろうか。63のまちづくりのプロたちの仕事が熱い言葉で書き綴られていて、一気読みした人は少し外の風に当たりたくなるかもしれない。窓を開けて部屋の外を眺めてみると、あなたの前にはどんな風景が見えるだろうか。大都市の喧騒の中にいる人も、静かな田園が広がっている人もいるだろう。どんな風景の前にいても、あなたにはその風景をつくり整えてきたまちづくりの仕事に従事する人々の思いが重なって見えているのではないだろうか。
 本書ではさまざまなまちづくりに関わる仕事を紹介した。まえがきに饗庭伸さんが書いたように、多様化する社会の中、まちの課題とそれらを解決すべく奮闘する取り組みも日々増え続けている。あなた自身が考える課題にあった仕事がこの本の中に見つからなかった人もいるかもしれないが、そんな人はぜひ自らその課題に真っ向からぶつかってみてほしいと思う。その挑戦や失敗が、また新しいまちづくりの仕事をつくり、あなた自身が先人として未開の分野を切り開いていくことになるだろう。
 もちろん、学校を出てすぐに一人で新分野に飛び込むのは勇気がいる。幸い、本書に載っているまちづくりの仕事にはどれも共通して「現場」がある。まちに生きる人々や辣腕の専門家たちと膝を付き合わせて議論したり、ともに汗を流したりすることは、大変なことも多いが、ほぼ例外なく楽しい。人々が集まり暮らす場所を「まち」と呼ぶならば、まちの中で、もしくはまちのために働くのはドラマの連続であり、どの職場を選んでもまちづくりの経験値を上げるのに不十分ということはないだろう。
 僕がまちづくりの仕事に関わることになったのは極めて偶然である。建築を大学で学んだ後、意匠設計の能力が高い人たちはたくさんいて、僕が進むべき職場ではないような気がしていた。何か建築プロジェクトの川上で働きたいと思いながらもどんな仕事があるのかわからず右往左往していた2011年、東日本大震災が起こり、インターン先の設計事務所オンデザインの西田司さんとボランティアに行くことになった。そこからまちを震災前よりも面白くしようと立ち上がる人々に出会い、復興まちづくりに現場常駐で取り組むことになった。気づけば意匠設計の事務所でまちづくりを担当するスタッフとして5年が経ち、東北だけでなくいろいろなまちのプロジェクトに携わらせてもらってきた。学生時代には想像もしていなかった働き方だが、今ではこれしかなかったとさえ思っている。
 もし、当時の僕のように進路に悩み、まちづくりに関わるにはどうしたらいいか迷っている人がいたら、本書を見取り図に一歩を踏み出してほしい。本書に寄稿してくださった方の会社の門を叩いてもいいし、地元のまちを盛り上げている人に話を聞きに行ってもいい。人生を面白くする働き方に出会えるかどうかは運次第。だけれどもそのキッカケを掴んでいくのはあなた自身の手である。世界のどこかのまちづくりの現場で、あなたに会えることを楽しみにしている。
 最後に、多忙を極める仕事の中ご寄稿いただいた執筆者の皆様、情熱と誠実さを持って本書の企画編集を行ってくださった学芸出版社の井口夏実さん、神谷彬大さん、本当にありがとうございました。

2016年8月 編者の最若手として 小泉瑛一