図説 わかるコンクリート構造



 土木系の大学や工業高等専門学校における「鉄筋コンクリート構造」に関する教科書は、これまでに数多く出版されています。いずれも教科書としては非常に優れていますが、近年、教科書の使われ方は二通りあってもよいと感じるようになりました。

 1つは、鉄筋コンクリート構造の基本的な理論に加え、設計で用いる式やその背景にある実験データ等が豊富に示され、卒業後にも専門的・実務的な知識を調べる際の参考書としての役割を有する教科書です。鉄筋コンクリート構造のこれまでの教科書はほとんどがこの考え方に基づいて執筆されています。

 もう1つは、鉄筋コンクリート構造について、大学あるいは工業高等専門学校で最低限、身に付けてほしい内容に限定し、わかりやすい図を用いて基本理論やそのメカニズムを学ぶとともに、例題・演習問題によって、学んだ知識を確実に身に付けるための教科書です。

 本書では特に後者を意識して、執筆に際して以下の点に主眼を置いています。
(1)できるだけわかりやすい文章となるように努力しました。すなわち、記述に当たり読者にとって親しみやすい文調、いわゆる口語調としています。
(2)内容に合致するイラスト、工夫をした図表を多く取り入れています。
(3)随所に「コラム」欄を設け、内容に関係する「難解な専門用語の解説」、「難解な式の背景にある考え方」など、ちょっと深い話をわかりやすく説明しています。
(4)例題、演習問題を豊富に取り入れ、理解を助けるとともに、復習により知識が確実に身に付くよう配慮しています。
(5)計算式は理論や実験から導かれる一般的な式を示し、例えば、土木学会コンクリート標準示方書による算定式については、あくまでも参考として示しています。
(6)鉄筋コンクリート構造で用いる構造力学の知識を復習するための章を設け、理論の理解がスムーズにできるよう配慮しています。
(7)大学の講義回数に合わせて、「15回」で内容の説明が終わるような内容・章構成にしています。また、最も重要な「曲げモーメントを受けるRCはりの力学挙動」の部分に多くのページ数を割り当てています。

 執筆は、大学や工業高等専門学校において実際に授業を担当されている新進気鋭の先生方にお願いしました。また、編集においては、経験豊富な先生方にご協力いただき、内容に関して忌憚のないご意見をいただきました。本書が読者の皆さんにとって、本当の意味で「わかる コンクリート構造」となることを願っています。

 最後に、本書の出版の機会を与えていただき、編集に際しては献身的なご協力をいただきました学芸出版社の井口夏実氏、森國洋行氏に厚くお礼申し上げます。

2015年3月
監修 井上 晋(大阪工業大学)