地域の力が日本を変える
コミュニティ再生と地域内循環型経済へ

あとがき


 近年、地域再生が政治の世界でも大きく取り上げられ、政策面でも地域再生法の制定や地域活性化に関する政策が政府の重要政策として位置づけられるなど一緒のブームと言えるような様相を呈しています。しかし、地域を訪れてみると、こうした永田町や霞ヶ関のブームとは裏腹に、高齢化や人口減少の波は容赦なく襲いかかり、地域は沈滞ムードに覆われたままです。
 こうした地域の実態を目の当たりにし、どうすれば地域再生を効果的に進めることができるのか強い関心を持っていたところ、非営利・独立のシンクタンクとして、社会を良くしていきたいという志の下に、政策研究、人材育成などの活動を行う東京財団との運命的な出会いがあり、実効性のある地域再生政策を取りまとめるべく、地域再生政策研究をプロジェクトリーダーとして進めてきました。
 研究を進める上で大切にしたことは、現場の視点です。可能な限り地域に赴き、地域再生の実態をしっかりと見て、肌で感じるとともに、そこに暮らす方々のお話に耳を傾けることを重視してきました。地域に愛着と誇りを持ち、「地域を何とか元気にしたい」と熱く夢を語り、生き生きと活動する多くの地域再生実践者にも出会うことができました。語り合いの中で実感し、学んだことは、地域には大都市以上に素晴らしい資源が溢れ、豊かな暮らしを実現する可能性があることや、優れた人材がたくさんいること、そして、地域再生は地域に暮らす住民自身が進めるものであるということでした。
 豊かな地域の文化が咲き誇る、世界から憧れられる美しい日本をつくりたい。そのためには、地域が元気でなければならない。地域の再生なくして日本の活性化はありません。
 地域の厳しい実態や日本の投資余力を考えると、地域再生は待ったなしの状況にあります。
 暗闇を灯す炎のように、再生に向けた地域の熱い想いは、着実に広がってきています。こうした住民主体の地域再生の灯を消すことなく、的確に後押しできる政策を打ち出していくことが、今、求められています。本書はその一助となれば、という想いで取りまとめたものです。
 ここまでお読み頂いた読者のみなさん、ありがとうございます。地域再生の取組や政策づくりを進めていく上での何らかのヒントをつかんでいただけたなら、それは私にとって大きな喜びです。
 本書発行にあたり、ご多忙の中、快くインタビューに応じ、示唆に富んだ貴重なお話を聞かせていただいた、開TB常務取締役の清水愼一氏、商い創造研究所代表取締役の松本大地氏、NPO法人ハットウ・オンパク運営理事の野上泰生氏、LLC場所文化機構代表の後藤健市氏、美瑛町長の浜田哲氏、また、ここにお名前は挙げることがかないませんが、研究会や視察先で地域再生の取組について教えてくださったたくさんの「地域を良くしたい」との想いを持つ同志の皆さん、そして全面的にお力添えをいただいた学芸出版社の中木保代氏に大変お世話になりました。心より御礼を申し上げます。
 最後に、愚痴一つこぼさず、研究活動を全面的にサポートしてくれた妻・理香に本書を捧げたい。
井上 健二