よみがえる商店街
5つの賑わい再生力

はじめに

 日本全国、人の住むところに商店街がある。地域によって商店街のありようはさまざまだ。それぞれの地域のニーズによって生まれた商店街は、歴史も規模も性格も皆、異なる。
 商店街と地域はお互いに支えあう関係になり、そこはモノの売り買いだけでなく、地域社会の中心的な場となり、そしてまちの顔ともいえる存在になった。商店街は、公的空間でもなく私的空間でもない、日本独特の温かさ、文化、地域性、賑わい、雰囲気を持つものになった。
 しかし、商店街の主構成員である小規模商店(従業者4名以下)数が130万店(1988年)から76万店(2007年)へと減少していることなどに見られるように、商店街は厳しい状況にある。商店街は市街地内の中心として、都市計画法で商業地域や近隣商業地域に指定されたが、そこには商業施設の投資はなされていない。
 今や主たる商業施設の出店地は郊外である。20年前、既存商店街を中心とする日本の小売業総売場面積は約1億平方メートルであったが、今やこの面積は郊外指向の強い大型店の合計売場面積になっている。郊外では、単純化、標準化、規格化された大小さまざまな商業施設が周囲の景観に構わず自己顕示し、地域との脈絡もなくチェーン展開している。そのような多様性の失われた地域からは元気が出てこない。地域経済の血液である資金が中央に吸い上げられるためである。
 日本は、人口減少、超高齢社会に入った。環境問題から二酸化炭素の大幅削減は急務である。所得の伸びは期待できなくなってきているし、莫大な財政赤字を抱え、将来に不安を抱えている。
 日本を元気にしなければならない。そのためには地域が元気にならなければならない。元気な地域の拠点として商店街が見直されている。それは、過去の商店街の復活ではなく、地域や市民側からの発想に立ち、ハードもソフトも含めて自分たちのまちをトータルに捉え、より良くする活動、すなわちまちづくりの取り組みから生まれる。新しい時代にふさわしい“街”の再生が求められている。
 本書の第1部では、商店街をめぐる歴史、政策等を顧みながら、筆者らが実践している商店街再生のステップを紹介した。第2部では、数多くの元気な商店街の中から賑わい再生力の源泉を、人間力、地域運営力、地元密着力、観光力、創造力に求め、それに秀でた12商店街の事例を紹介している。これらの力は、どんな商店街でも持ちうるものである、というのが現場での実感である。
 本書が、商店街のみならず地域の多様な方々が参加する“商店街をベースにしたまちづくりの実践”に役立てられることを願っている。