図説 わかる材料
土木・環境・社会基盤施設をつくる

はじめに
 「土木材料」として用いられるものは、種類が多く、しかも多様であり、材料の性質、特色を十分に把握しなければなりません。構造物の計画、設計、施工さらには急増しつつある維持管理・補修の各分野で、合理的にこれら材料を使用してきています。同時に日進月歩で登場する新しい材料への知識、理解かつ積極的な利用も必要です。それらを反映し、「土木材料」あるいは「建設材料」に関する書籍は、すでに多く出版され、各大学・高専などの教科書にも利用されてきました。
 本書の章構成は、1章「材料からひろがる可能性」に始まリ、2章「セメント」、3章「混和材料」、4章「骨材」、5章「コンクリート」、6章「鋼材」、7章「高分子材料」、8章「アスファルト」と章の並びはこれまでの著書とほぼ同じです。しかし、本書では、メインの材料を5章の「コンクリート」におき、ページ数を最も多く割きました。特に、1章の「材料からひろがる可能性」のなかで、「コンクリート入門」の節を設けています。ここでは、コンクリートの基礎知識を述べ、1章の直後から登場する「セメント」「混和材料」「骨材」との関連をはっきりさせました。本書の根底には「“丈夫で美しく長持ち”するコンクリートで、“丈夫で美しく長持ちする”市民社会を!」と願う気持ちが流れています。
 文章の記述と編集に当たり、これまでの著書とは視点を変え以下の点に特長を置きました。すなわち、
 @できるだけわかりやすい文章となるように努力しました。すなわち、記述に当たり読者にうちとけやすい文調、いわゆる口語調、コラム調としました。また、各章において、必ず「目的、定義」を述べ、読者が何をここで学ぶのか明確にしました。
 A内容に合致するイラスト(さし絵)、さらにはわかりやすい写真の採用と同時に、工夫をした表を多く取り入れました。
 B随所に「エピソード」欄を設け、内容に関係する「難解な専門用語の平易な説明」「とっておきのお話」「最新情報」などをわかりやすく説明してあります。
 C「解説」欄では、重要かつ強調したい課題を取り出し、詳細な説明を加えました。
 D大学の講義回数に合わせて、「15回」で本書内容の説明が終わるような章構成にしました。
 執筆は、現役かつ最前線におられる先生方にお願いしました。同時に、ベテランの先生方からなる編集協力者には、各章ごとの執筆内容に関し忌憚のない意見を頂き、反映しました。
 以上のように、「図説 わかる材料」は、この分野での卓越した専門家の方々のみならず、関西圏における大学を中心に活躍されるほぼ全員の先生方に編集にかかわって頂きました。
 さらには、本著書のイラストを担当して頂いた野村彰氏のお陰をもち、アニメ調に親近感を持つ読者層に対して、本書の「わかりやすさ」と「親近感」を強調することができました。学芸出版社の井口夏実氏には編集にあたり、献身的な努力のみならず、素人眼からの多くの指摘を頂き、ここでもより「わかりやすさ」に向かうことができました。この場を持って厚くお礼申し上げます。

2009年7月 
監修 宮川豊章(京都大学)
編者 岡本享久(立命館大学)