「地域遺産」みんなと奮闘記


書 評
『環境緑化新聞』 2007.7.1
 日本ナショナルトラストの元事務局長を務め、現在は地域遺産プロデューサーを名乗る著者の奮闘記である。  日本ナショナルトラストは英国を手本に、日本の美しい自然や文化遺産を観光資源として保護し、活用しながら後世に残すことを目的に設立された。
 歴史的建造物が数多く存在し、現在でも生活の中に息づいている英国と、「十年一昔」という言葉に国民性がよくあらわれているわが国では、その取り組みも当然違ったものになる。
 各地にのこる茅葺き民家、宿場町、蒸気機関車、鳴き砂の浜など、日々日本人の記憶の中から失われようとしている生活文化遺産に光を当て、甦らせてきた著者の30年の活動は敬服に値する。
 所有者との交渉や資金集めから、行政・専門家との協力、市民へのアピールと八面六臂の活躍。もちろんそこには成功の喜びも有れば苦い思い出もつまっている。地域固有の自然や文化遺産といった宝の山を生かしていくのは、こうした人々の地道な活動の積み重ねの中から始まっていくのだろうと確信した。