『環境緑化新聞』 2005. 4. 1
95年に渡独、カールスルーエ市在住の環境ジャーナリストの目で見た「ドイツの実像」が書かれている。筆者の住む市の環境とまちづくりの取り組みが紹介されている。テーマも街の緑、都市交通、ゴミのリサイクル、自然エネルギー、エコロジーライフと広範囲にわたる。
街並や生活スタイルは百年経っても変わらないのに環境保全や社会システムに関しては、驚くほど革新的な実験を行う。その原動力が、どこから来るのかと問えば、「活発な市民参加」と「地方分権の精神」。筆者によれば、主体的にプロジェクトを企画実行する地域の独自性と創造性が、それを可能にしている、という。
第一章の「街の緑化」では、市の公園局の活動と屋上・壁面緑化、ビオトープ、クラインガルテンや中庭コンテストが取り上げられる。私有地の緑化を進めるために企画されたコンテストはすでに25年の歴史がある。一つひとつの中庭の規模は小さくても、合計すれば市街地全体に大きな影響を与え、雪だるま効果で隣近所に伝染していくという。そんな街づくりへのヒントが横溢している。
(I)
『都市問題』((財)東京市政調査会)2005. 4
カールスルーエ市はドイツ南西部にある人口約28万の中都市。質量共に充実した緑地政策、「カールスルーエモデル」と呼ばれる先進的な都市交通システムなどで知られ、日本をはじめとして世界中から多くの視察者が訪れている。しかし、海外から視察に訪れる人びとは、自治体の環境局長や環境団体の代表など、環境意識のきわめて高く知識の豊富な人びとだけに話を聞き、それがさもドイツ全体の現状だと鵜呑みにしてしまう傾向が否めない。この本は、そういう環境意識の高い人びとへのインタビューも入っているが、ビオ農業を営む農夫のおじさん、エコショップで買い物をする親子、クラインガルテンに勤しむ夫婦、カーシェアリングを利用する家族、風力発電に投資する主婦など、ドイツのごく一般の人びとへのインタビューが豊富に盛り込まれている。ドイツの一般の人びとが日常生活の中でどのように環境を意識しているかを知ることで、「環境先進国」と賛美されるドイツの真実の姿を私たちは理解することができるのではないだろうか。街の緑化、先進的な都市交通システム、ゴミのリサイクル、自然エネルギーの活用、充実した環境教育等、革新的なドイツの環境政策はどのように実現されたのか?
ドイツ人を「環境」に駆り立てる原動力とは何か? 環境・交通・まちづくり関連の自治体、コンサル、企業、NPO関係者の方々の参考になり、過度に理想化された「環境パラダイス」ではない、ドイツの実像を感じ取れる一冊だ。
『新建築住宅特集』((株)新建築社)2005. 3
「ドイツの環境対策」といえば日本では「完璧」のような紹介ばかり目にするが、はたしてそれだけが真実の姿なのだろうか? 本書は、在ドイツ10年の著者が、月刊誌に連載していた「ドイツ環境レポート」を加筆修正してまとめたもので、街づくりのみならず市民活動や福祉まで、幅広く「ドイツの今」を紹介している。そこに見えてくるのは、課題や問題点も抱えた「環境先進国ドイツ」であり「環境への取組みが街づくりに直結する姿」や「教育と啓蒙の重要性」である。日本が学び、参考にできることは多くあるが、ドイツ方式をそっくりまねるのではなく、独自の策を見出さねばならない。そのヒントも、本書にはたくさん示されている。
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