エコロジーと歴史にもとづく地域デザイン


書 評
『環境緑化新聞』 2004. 8. 1
  地域づくりの理念と手法を比較・展望するというのが本書の目的。かつてあった都市と田園の境界線は消滅し、都市の内部を流れていた河川、運河は埋め立てられ、水辺も消えた。今、水辺に新たな役割と意味を生み出す具体的な提案活動が世界各地で試みられている。20世紀型の都市開発を見直し、歴史と生態系を大切にしながら持続可能で、かつ個性豊かな地域づくりが望まれている。そのキーワードが歴史的環境からのアプローチと、水・緑、動物や昆虫などの自然生態系の環境からのアプローチとを重ね合わせ、豊かな地域像をより多角的に描こうとの動きだ。
  エコロジーと歴史、この二つのキーワードを結びつける発想は、これまであまりなかった試みと言う。本書は昨年6月7、8日の2日間、法政大学主催のシンポジウム「エコロジーと歴史に基づく地域デザインへの挑戦」を基にしたもの。東京だけでなく、ヴェネツィア、中国江南の都市、バンコク、ボストンといった水の都市の再生が語られ、国際的視点から比較考察できる。法政大学大学院エコ地域デザイン研究所の編による一冊。