図解 建築と設備の接点
トラブル予防のツボ

おわりに

 『建築品質トラブル予防のツボ』を出版した後に、建築と設備との取合い部においてもトラブルが多いので、このことを書かなければいけないのではないかということで本書を企画した。
 設備機器や配管配線は必ず建築に取り付けられる。床に設置され、壁、天井に取り付けられる。その取合い部すなわち「建築と設備の接点」において、設備は性能・機能を発揮すると同時に、様々なトラブルも発生する。本書は設備単独のトラブルでなく、接点でのトラブル事例を明らかにし、その原因と対策を示すことで、より良い建物をつくることに役立てばという思いで書いている。この本を書きながら、なぜトラブルは起きるのかを考える中で、大事なことが二つあることを改めて認識した。一つは、「相手のことを思いやる」ということ。まずは建築主の思いを理解し、その実現へ向けてベクトル合わせができていることである。次に建築は設備のことを、設備は建築のことを互いに尊重し、思いやり、コミュニケーションを取ることである。これは設計から施工、そして維持管理まで、すべてのプロセスで大事なことだ。
 もう一つは、「トラブルを予測する」ということ。トラブルを予測できれば、対策が検討できる。完成形をイメージできれば、どうしたら実現できるか考えることができる。このことはものづくりの基本で、設計の早い段階で検討し、遅くとも施工に着手する前には検討が済んでいることが重要である。本書がトラブルのない建物を実現することに少しでも役に立てば幸いである。
 本書の出版に際し、一般社団法人 日本建築協会ならびに同出版委員会委員長西博康氏をはじめ、委員会の方々には多大なご支援、ご指導をいただいた。また、一般財団法人 日本建築総合試験所・平沢隆志氏からも貴重なご意見をいただいた。特に学芸出版社の岩崎健一郎氏には出版に向け多くの提案をいただき、また校正に献身的なお力添えをいただいた。ここに深く感謝する次第である。