図とキーワードで学ぶ 建築設備


はじめに


 建築物を快適に、永く使い続けていくために、建築設備はなくてはならない存在である。長い歴史の中で人々が培ってきた一つ一つの建築設備技術をひもといたとき、無味乾燥に思える機械室設備群の価値を実感できるであろうし、また、設備設計の緻密さにロマンを感じるのではないか、とも思う。

 本テキストは、大学や専門学校などで建築設備を学習する学生諸氏のために執筆した。全7章において、建築設備総論、空気調和設備、給排水・衛生設備、電気設備、省エネルギー技術、消防・防災・バリアフリー設備、そして設備図面の描き方について、順次、詳細な解説を試みた。また、将来の建築士試験などをもにらみ、各種資格試験に出題された問題になじむ工夫も取り入れた。全148問を掲載しており、これらを確認するだけでも相当な実力となるであろう。

 筆者の大学における建築設備の授業の経験からいえば、初学者は、個々の知識をバラバラに記憶しはじめるのではなく、まず最初に、建築設備の全体像をイメージすることから始めるべきであると考えている。そのため、導入部では、空調、給排水、電気設備をまず描いてみる、というスタンスで解説を始めている。さらに、最終章において、建築設備設計の基本コンセプトをまとめ上げるプロセスにも言及した。本書を精読することによって、建築設備の基本知識が体系化され、また、建築設備のおもしろさを実感できると考えている。

 身近な設備見学会の機会があるならば、ぜひ積極的に参加され、本書の知識をより確実なものとしていただきたい。また、自身の建築設計作品に建築設備を落とし込みながら、実践的に理解を深めていただけたら、と思う。そして、我々の住む地球環境を守る立場から、建築設備を適切に設計し運用していくことの大切さに、少しでも思いをはせていただけたなら、この上なく幸いである。
2010年10月          
飯野 秋成