耐震シェルターがわかる本


発刊に寄せて

 耐震シェルター「壁柱」は、大阪府木材連合会と京都大学防災研究所が、間伐材を活用して吸震性の高い耐震壁による耐震改修工法として開発しました。
 地震で家は損傷を受けても「人の命は助かる」ことを主眼にし、40cm変形しても元に戻る優れた変形性能を有し、しなやかに変形しながら地震の揺れを吸収して家全体の重さを支えて倒壊を防ぐ新工法です。
 平成20 年以来、過酷な実験を繰り返し、確かな性能を実証してきました。一部屋補強でも補強前の4 倍以上の強度を発揮し震度7 に耐えることが実証されました。
 大阪府木材連合会会員や工務店において「壁柱」を活用した耐震補強工事をかなり実施してきましたが、まだ一般には広く周知されていないのが実情です。今後この工法の普及に向けてさらなる活動が必要であります。
 そうした中、一級建築士の前田邦江氏が、築90 年を経た長屋住宅に「壁柱」による耐震改修工事を行いました。
 この本はこの体験記録と「壁柱」を含めて10 種類の耐震シェルターの特性を取材してまとめた内容で、まだあまり知られていない耐震シェルターへの入門書となってくれるものです。
 筆者は耐震シェルターを耐震補強工事に使用したことで、工法の理念と合理性において深い共感を抱き、一層の探求心に駆られこの工法をまだよく知らない人達にむけて、工法の趣旨を分かりやすく伝えたいと執筆に至ったとのことです。
 災害に対して、命が助かる方法を学んでほしいという筆者の率直な願いに貫かれた実用書であり、本書が広く耐震補強への意識を高める役目を果たしてくれることを期待します。

一般社団法人大阪府木材連合会会長 中村暢秀