小さなエネルギーで豊かに暮らせる住まいをつくる
エネルギー半減をめざす1985アクション

あとがき

 なぜか私は小さい頃から社会問題に関心があり、オイルショックの後に出てきた「エネルギー」に関する情報を追いかけ、核融合の研究者になりたいと考えるようになりました。その当時、核融合はエネルギー問題を解決する“夢の発電”と言われていたからです。結局大学では物理学の別の分野に進んだのですが、「社会を変えるには教育だ」と考えて卒業後は教師になりました。その後、様々な偶然と必然があって教師を辞め、住宅分野に首を突っ込むようになり、今に至っています。
 大橋マキさんとの対談でも鋭く指摘されたように、私の役割は「普及」です。また藻谷浩介さんとの会話から「教育者的エンジニア」という言葉がひょっこり出てきました。本書の出版作業を進める中で、私は教育者的エンジニアとして家庭の省エネを普及する立場であることが明確になりました。
 1985 アクションは、建物の工夫による省エネを中心に置きながらも、家電や調理、さらに暮らし方まで視野を広げ、内容の濃い勉強会を開催し、有用なツールを開発し、地域から家庭の省エネを拡げていく仕組みを持っています。これほど家庭の省エネに“本気で”向かっている活動は他に類を見ないと自負しています。
 みなさんのお仕事や活動が家庭の省エネに関わりがあるなら、本書でご紹介した具体的な省エネの方法を今後の参考にしていただきながら、もちろんご自身の家庭の省エネにも活かしてください。そして、何らかの形で我々の活動とつながっていただくことを願います。これから新築やリフォームを考えていて本書を手に取った方は、ぜひ本書を参考に「小さなエネルギーで豊かに暮らせる住まい」をつくってください。

2018年4月
野池政宏