住みよい家

快適・環境・健康

書 評
『民家』(日本民家再生リサイクル協会)2004. 7
  現在では家を建てるとき、好むと好まざるとに関わらず、環境問題について避けてとおれない時代になってきた。いま私たちの目の前にある建築に関する自然環境、熱環境などの問題点とその解決方法が、この一冊に集約されている。環境を考慮した家造りを考えている人への指針が空気、熱、太陽、水、緑などといった切り口で説明されており、建築のプロ、アマ問わず勉強になる一冊である。
  最近、この種の本はたくさん出版されているが、なかには内容が特定企業の宣伝であることもあり注意が必要だが、本書にはこのような意図はまったくない。
  材料と工法に関していくつかの例をあげ、それぞれの長所短所を列記し、あくまでも中立的なスタンスをくずさず、その選択は読者に任せている。押しつけがましい結論は、あえて避けているようでもある。
  文中、細かいデータ、表、数量などが出てくるが、この類が苦手な方は飛ばして読み進んでも全体内容の理解の妨げにはならない。堅い内容にもかかわらず、イラストや写真が随所に入っているため読みやすい。
  「環境を考慮した一棟一棟の家造りの積み重ねが、地球全体への負荷を軽減する」という著者の思いが全編を通じて伝わってくる。
(杉浦千城)