実践につながる インテリアデザインの基本


はじめに

これから、インテリアデザインを学ぼうという人へ

 建築、あるいはインテリアは人に幸せを提供し続けることができる仕事である。なぜなら、家を建てる、店舗を出店する、事務所を開設するなど、いずれもハレのときに仕事の相談を受けるからだ。もちろん、老朽化した空間や、利用価値の薄れた空間のリノベーションやコンバージョンなど、空間や資産を再生することも職能のひとつといえるだろう。携わった仕事が人に喜ばれ、空間が活き活きと輝く姿を見ると、皆さんもきっとこの仕事に幸せを感じることとなるだろう。

 本書は、大学・各種専門学校の学生、およびこれから建築やインテリアを学ぼうとする人向けに書かれたテキストである。執筆者はいずれもプロとして活躍している先生方で、その先生方が実際の業務から学んだ、他のテキストには載っていないプロとしての秘訣や知識をふんだんに盛り込んでいる。1章、13章では実例を取りあげ、わかりやすく概説しており、2章では複雑な業務の流れを手ほどきするようにこと細かく記している。他の章も、インテリアデザインを学ぶ上で欠かせないことばかりだ。わけても、本文右欄にしたためた「赤パン先生」からのコメントは、プロが実践しているテクニックを惜しげもなく披露しており、皆さんが将来活躍されるヒントがここに隠されている。そういった意味では、現在活躍しておられる方々にもぜひ手に取っていただきたい。

 とはいえ、本書で学ぶことがすべてであるはずもなく、まずは建築やインテリアデザインに興味を持ち、好きになっていただきたい。そうすれば、学ぼうという意欲がどんどん増し、必ず次への飛躍につながることだろう。一気にプロになれる人はひとりもいない。かく言う私も学生のころは雲をつかむような勉強を繰り返してきた。やがてそれが霞になり、徐々におぼろげなかたちが見えてきたころにやっとプロとして動き出せたように思う。皆さんには、本書で学ぶほか、将来目標とする人物をいち早く探し出してほしい。その人が駆け出しのころにつくった作品を調べたり、若いころに書いた文書を読んだりしているうちに、遠い目標が近い存在に感じるようになるはずである。1日も早くその人に近づけるよう、決して諦めることなく、楽しみながら学習されることをお勧めする。
2018年3月
橋口新一郎